主催者の声
構想日本の「自分ごと化会議」は、そこに住む市民の方々が自分たちのまちのこと、行政のことについて関心を持ち、行動をする、その第一歩をつくる大きな意味があるのはもちろんである。ただ、主催者側としては、一番「自分ごと化」に効果があったのは「行政職員」の側である。市長も行政職員も、自分たちが関わるまちを良くしたい、次の世代に向けて行政改革をしたい、その思いは当然のように持っている。それにもかかわらず、過去の慣例や各種既得権益とのしがらみ、議会の価値観との対立などいろんな「障壁」によって、本来行動すべきことに対して行動しない「癖」がついてしまっている。行政側が「本来すべきこと」を「自分ごと」として確認し、市民のために、そして市民とともに「行動する」その大きな一歩になるのが「自分ごと化会議」なのである。
富山県では、令和3年度から「官民協働事業レビュー」という形で実施しています。開始当初こそ、県職員の間に、ショーのように事業が廃止されるのではないか、と不安感がありましたが、実際には、委員や県民評価者の目線は「よりこの事業を効果的に実施するためにはどのようにすべきか」という点であり、いつのまにか県職員と委員・県民評価者が一緒になって「事業の枠組みは必要なものだよね、じゃあ成果指標や補助金の基準の見直しをどうにかしよう」と時間いっぱい議論する回もあるなど、会場はいつも熱気に満ちています。富山県では、政策形成や事業実施において、県民のウェルビーイングをどう向上させていくかを考えることとしており、そのための事業の不断の見直しに当たって、県民に自分ごととして意見をいただくことは有効です。県庁では普段窓口業務等を行っている職員は多くなく、レビューで県民さんからの意見を直接伺いやりとりすることは、多くの職員にとって刺激となり、政策立案のヒントを得たように感じます。また、一日のレビューが終わると、無作為抽出で選ばれた「県民評価者」の県政への関心が大きく上がる手応えも感じられました。さて、来年度はどういうテーマで取り組みましょうか。
行政の会議に参加する市民は、いつも同じ顔ぶれで行政は運営しやすいのですが、想定内の意見集約になりがちです。無作為に選ばれた市民が参加者の「とみおか未来会議」は、シナリオが全くなく、「そもそも論」の意見が飛び交い、行政は緊張の連続ですが、職員は課題もさらけ出して市民とフラットに「対話」を行うことを心がけています。この緊張感がとても大事なのです。市内にある11の公民館での市民との会議にこの手法を取り入れました。「とみおか未来会議」が「地域の未来」を紡いでいくことを信じ、歩みを進めていきます!
三原市では、事業レビューを過去9回実施し、平成30年7月西日本豪雨や新型コロナ感染症での中止を除き、2回目から構想日本の支援を受けています。当初は対決型の空気でしたが、3回目に市民判定人方式を本格導入したことが転機となり、市民判定者研修など事前準備に力を入れたことで対話型の議論に空気が変わりました。地域密着型行政課題の解消に向けては、市民と行政、市民同士の対話を通じた「自分ごと化」が何より重要です。かつて企業城下町で、財政が比較的安定していたためか、市民の市政への関心は低く、市民判定者応募率は1%前後で全国最下位でしたが、回を重ねることで令和5年度は2.4%に上昇しており、さらに、市民判定者グループワークなど工夫しながら奮闘中です。
「初めからワクワクして、回を重ねるごとに色々な方の意見を聞けてすごく刺激を受けました。私は『自分ごと化』というワードがすごく素敵だと思います。でも中々、自分のこととして考え行動するきっかけがなく、もっと考えて自分ごと化して行動するようにしたいと思います」。今年5月に提出された自分ごと化会議の答申の一行です。2014年度に大刀洗町で自分ごと化会議(住民対話タイプ)がスタートして10年、昨年度までに無作為抽出で選ばれた委員数は人口の1.8%を超える290名、こうして町のこと、地域のことを「自分ごと」として考え行動してくれる住民の皆様が一人ずつでも増えていけば、大刀洗町はもっともっと素晴らしい町になっていくと確信しています。
平成17年5町合併を選択した新生淡路市、最大の目標は、破綻していた財政の再建でした。その一手法として淡路市は構想日本の事業仕分けにお世話になりました。平成22年からの事業仕分け人には、元我孫子市長、元消費者庁長官の福島浩彦さん、現デジタル大臣の河野太郎議員さん等も名を連ねていただき、今の淡路市の興隆に繋がりました。一方、新生淡路市の課題に人材育成がありました。現場の市行政がどう説明責任を果たせるかの研修には事業仕分けの手法は秀逸でした。平成27年からは市の職員を構想日本に派遣して学ばせていただきました。今、その職員達は市の中枢で勤務しています。今の市行政の核は、構想日本によって鍛えられた職員が一翼を担っていると言って過言では有りません。重ねて有難うございました。益々のご隆盛をご祈念しています。
開催している新庄村議会
2017年から議会改革を目指し、アンケート調査をしたところ、「議会に関心あり」という村民が6割ぐらいでしたが、「村民の声が議会に反映されている」と思う村民は2割弱でした。どのような方法で村民の声、要望を取り上げるか大きな課題でした。そのような時、構想日本の「自分ごと化会議」のことを知り、全議員8名で構想日本に伺い、我々の想い、要望を聞いていただきました。全面的に協力をしていただけることになり、すぐに村の庁舎建設について「自分ごと化会議」を開く手続きをしました。今まで行政、議会に関係がない若者、婦人の方々が手を挙げてくださり、行政が開く審議会や委員会とちがい、活発な意見が出ました。そして村民の意見を取り入れたすばらしい庁舎が2022年に完成しました。議会の議決権の重要性を勉強しました。その後も「自分ごと化会議」を開いています。
※掲載の肩書きおよび所属先は2024年4月時点のものです。