- 第119回「美しい日本」について話そう~美しい国とは何がどうであることなのか~ 2007.6.28
パネリスト
◆中西進氏:万葉学者。令和の名付け親(と言われている)。日本学士院賞(70年)、和辻哲郎文化賞(91年)他、受賞。文化功労者、瑞宝重光賞、文化勲章受章。
◆アレックス・カー氏:東洋文化研究家。米国出身、77年から京都府亀岡に住む。四国・祖谷(いや)地域ブームの火付け役。
「美しき日本の残像」が外国人初の新潮芸術賞受賞。京都の町屋再生事業、コンサルティング事業を手がける(株)「庵」を創業。
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「一人ひとりの持つ美的感覚にもとづいて町や国を作る意識が何より重要」という強いメッセージの通った回でした。
「なぜ欧州は古い美観と現代生活がうまく融合できるのか」という具体的な話題、
また「自分ごと化会議」に通じる視点があり、学びが多々あります。(以下フォーラム内容を一部抜粋、敬称略)
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日本人に一番欠けているものは思考の成熟さだと思う。心の成熟があればもっと本質的な議論ができる。
それぞれが心の中で何を美しいと思えるかをもっと考えるべきではないか。「美」とは心の成熟に宿る。(中西)
欧州では18-19世紀の建物の外見に変化はなくとも、中に住んでいる人々は現代的な生活をしているのが常識。
現代人が快適に住めるように改修する技術はあり、意外と安く直せる。
日本は他の技術は非常に発達したが、古い町や田舎のリサイクル技術が発達しなかった。(カー)
日本では美観が二の次に扱われているが、心の貧困を救う福祉は文化政策。
それが一番後回しになるということは、役立たないものと考えられている証拠。
そういう政策がこれから転換されていけば大いに直っていく。
またそれ以上に大事なのは「国の金でないとできない」という心を捨てること。
個人が社会の一員として誇りをもち、情けないじゃないかと思って具体的に考えること。(中西)
私は何といっても風土に根ざしているかどうかを考えれば、美しいか醜いかという判断ができる気がしている。(中西)
一人一人がこれは嫌だ、これがきれいだ、と判断すること。そして考え感じることが大切。
そういう敏感な感受性は、昔から日本の文化が持っていたもの。(カー)
昔に戻るのではない、一番大事なものが何であるかを再認識して、
それを現代的な文明の中で頑なに守ろうということ。これが人間としての誇りだ。(中西)