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【1】「特ダネではないけれど(2) 財政破綻の崖」
新聞記者 松浦 祐子
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前回(2月12日)のメルマガで、日本の財政や社会保障について「様々な選択肢を知り、議論をしてみることが必要なのではないでしょうか」と書きました。
とはいえ私は、これらの分野の学者ではなく、対立する議論を解説したり、整理したりする力がないことをお許し頂きたいと思います。
その上で一記者として、一有権者として感じている日本の財政と社会保障の持続可能性への危機感について、お伝えしたいと思います。
国と地方の長期債務残高は2014年度末で1千兆円を超える見込みです。GDPの2倍以上の額に上ります。先進国では断トツの多さです。正直なところ、私には、あまりにも大きな数字過ぎて、イメージができません。現実感のない数字に「今、返済しても焼け石に水なのではないか」「将来のための財政再建よりも、今の生活をなんとかして欲しい」と思われる方も多いと思います。
そして、心の底では、経済大国の日本が財政破綻をすることはないだろうし・・・」と。
日本の財政破綻があるのか、ないのか。あったとして「いつ」なのか。これだけで、百家争鳴の議論が繰り広げられています。私も、かつて「いつか」を知りたくて、様々な方に質問をしたことがありました。
その中で一番納得できたのは、ある金融庁幹部のこのような説明でした。「今、日本は、財政破綻という崖に向かって、目隠しをして歩いている状況です。行き先にはかならず崖がある。でも、それまでの距離は分からない。最後は、市場で国債が買ってもらえなくなるかどうかです。買われなくなる理由は、一つとは限らないし、金融だけでなく、政治や社会情勢も引き金になりかねません。そして、そのときは、いきなり訪れます」
何も答えていない官僚答弁だと感じる方もいるかも知れませんが、私は誠実な答えだと感じました。市場のプロにも「いつか」が特定できないからこそ、財政破綻への対応は難しい問題なのだと思うのです。
それでも、国債が買われなくなる要因の一つが、明確に近づきつつあります。
これまで日本の国債の多くは、国民が銀行などに預けた預貯金で買い支えられてきました。しかし、豊富に預貯金ができた団塊の世代は退職の時期を迎え、預貯金を取り崩し始めます。
2025年には、医療や介護のニーズが高まる75歳となり、政府は、増加する社会保障費をまかなわなければなりません。税や保険料でまかなえれば良いのですが、足りなければ、国債を発行せざるを得ません。しかし、非正規社員が増え、賃金上昇も緩やかになっている若い世代に、団塊の世代以上の預貯金を期待するのは望み薄です。国債を買い支えられなくなるリスクは高まると予想されます。
危機を煽るつもりはありません。そのときに、市場が平穏であればラッキーです。具体的な議論を進めるための一つの目標として「2025年までに日本の財政を健全化する」ということを命題に掲げたいと思います。
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松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)
1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当などを経て、現在は新潟で県政を担当。
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