- 【No.993】ドイツのコロナ対策(2)―メルケル首相の発信とメリハリある財政政策 | 日本総合研究所理事長 翁 百合氏 | ※読者の声 1名※
【No.993】ドイツのコロナ対策(2)―メルケル首相の発信とメリハリある財政政策 日本総合研究所理事長 翁 百合氏
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構想日本メールマガジン【No.993】 2021.1.21 発行
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<目次>
【1】お知らせ
「ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ」 加藤 秀樹(著)発売中
【2】ご紹介
(1) 日本の現状を国際社会に訴えている「藤田早苗さんの講演会」オンライン、東京
(2)~クラウドファンディングのおしらせ~「自分ごと化会議in松江」第2期
全国初!住民による住民のための無作為抽出の住民協議会
【3】巻末寄稿文
ドイツのコロナ対策(2)―メルケル首相の発信とメリハリある財政政策
日本総合研究所理事長 翁 百合
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【1】お知らせ
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「ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ」 加藤 秀樹(著)発売中
構想日本の理念を集大成し、コロナ後の世界を展望する渾身の一冊。アマゾンにて購入いただけます。
ペーパーバックとKindle版(電子書籍)がありますので、お選びください。
まだご覧になっていらっしゃらない方へ、目次を少しだけご紹介します。
<目次>
第1章 世界二制度のすすめ〈世界のしくみを考える〉
第2章 「福祉国家×民主主義×経済成長」のトリレンマ〈国のしくみを考える〉
第3章 福祉国家の原点へ
第4章 多様な民主主義の始まり
第5章 私たちは生きているか
<書籍情報>
書名:「ツルツル世界とザラザラ世界・世界二制度のすすめ」
著者: 加藤秀樹
発行者: 株式会社スピーディ(Speedy,Inc)
定価(税込):〈ペーパーバック(書籍)2,530円/〈Kindle〉1,250円〉
Amazon書籍販売ページ(ペーパーバック版):https://www.amazon.co.jp/dp/B08PX7K296/
Amazon書籍販売ページ(Kindle版):https://www.amazon.co.jp/dp/B08PL2VS1G/
<本書の趣旨・概略> 加藤 秀樹
本書は、構想日本の20年に及ぶ、活動とその核となる理念をまとめたものです。
格差や貧困から民主主義の危機、地球温暖化にいたるまで様々な現代社会の弊害を貫く原因を整理し、これからの「世界の仕組み」「日本の仕組み」「私たちの生き方」のデッサンを具体的な事例を交えて示しています。
構想日本では活動開始以来、一貫して「低コスト高満足」社会を掲げてきました。それは、脱「お金で評価する社会」です。
“「生き物としての人間」復活”への一歩でもあります。その歩みを進めるために、私は「世界二制度」という仕組みを考えてみました。
私たちがこれから考えないといけない社会の方向性や、現場での活動の過程で見られた地域や住民の変化、課題解決に生かせる知恵の様々な例を本書で紹介します。
これからの生き方を模索している人、政治や経済の将来を考えたい人、地域を元気にしていきたい人などに是非、読んでいただきたいです。
☆京都大学前総長 山極寿一氏 推薦文☆
「新型コロナウィルスによるパンデミックで立ち止まった時、見えてきたのはこれまで歩んできたグローバリズムと科学技術偏重社会のゆがんだ姿だった。
このままでは経済が回らなくなり金融危機に陥って世界も人間も崩壊する。これまで『構想日本』を主宰し、日本の政策に鋭く切り込んできた著者は処方箋として『ツルツル世界』と『ザラザラ世界』の二制度を提案する。
それは『生き物としての人間』を中心に据えた新しい国の在り方だった。」
構想日本HP → http://kosonippon.org/wp-manager/book20201207/
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【2】ご紹介
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(1)「藤田早苗さん講演会」オンライン、東京
これまで秘密保護法や共謀罪、日本の表現の自由の現状を国際社会に伝えてきた藤田早苗さん。その藤田さん(国際人権基準の研究者)が昨年一時帰国、全国各地で講演を行っています。
詳細はこちら→ https://hyogen-tsutaeru.jimdo.com/
○ZOOM開催 オンライン学習会 日本を外から学ぶ学習会 「現代日本に潜む貧困問題」
日本は約7人に1人が貧困であるといわれています。新型コロナが生活困窮者に与える影響も懸念されます。
今回は、ホームレス支援など困窮者への支援で多くの成果を収めてきてこられた「NPO法人抱樸」の奥田理事長にお話しいただきます。活動を始められた90年代からの変化、コロナの影響、政府が強調する「自助・共助・公助」の問題(自己責任の強調)などについてお話しいただく予定です。
日時:2021年1月23日(土)19:00~21:30(日本時間)
登壇者:奥田 知志氏(NPO法人抱樸理事長)、藤田 早苗氏
参加費:400円 ※生活保護を受給されている方は無料です。別途ご連絡ください。
懇親会:講演後、オンラインで実施
お申し込みフォーム URL: http://ptix.at/mLMy6R
※お申し込みに関する注意事項など 詳細は下記を御覧ください。
☆申し込みされた方は、後日録画を期間限定でご覧いただけます。
チラシ http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/210123.pdf
学習会FBページ : https://www.facebook.com/japanfromoverseas
事務局連絡先 : sotokaramanabu.uk@gmail.com
○東京 ※日時、会場が変更されています
「世界から見た日本のヒューマンライツ」メディア・新型コロナ・女性・貧困・差別
日時:2021年2月13日(土)14:00~16:00(13:30開場) ※1月30日(土)から変更
会場:池上会館(京浜東北線 池上駅より徒歩4分) ※ラズ大森から変更
定員:40人程度
参加費:1000円(学生無料)
お申込みは中東まで nishinaka.neon2020@gmail.com
活動の詳細はこちら → https://hyogen-tsutaeru.jimdofree.com/
上記、ご来場の際はマスクの着用をお願いします。
発熱や咳、喉頭痛などの症状がある人は来場を控えてください。
☆彡☆昨年12月に行われたオンラインセミナーが視聴できます☆彡☆
「日本は本当に自由な国なのか?」~国連自由権規約委員会にNGO共同レポートを提出~
登壇者:望月衣塑子氏、藤田早苗氏、海渡雄一氏、近藤ゆり子氏
Youtube URL → https://www.youtube.com/watch?v=k-Fi1KHA02M&feature=youtu.be
※皆様から、オンライン講演会の企画も募集しております。
■カンパのお願い■
今回はコロナの関係で従来の協力を頼めないことが多く、特に宿泊費などがかさんでいるようです。
ご協力いただける方は、いくらでも結構です。是非ともよろしくお願い申し上げます。
郵便振替
口座番号:00870-7-216543
〇八九(ゼロハチキュウ)店 当座 0216543
加入者名:日本の表現の自由を伝える会
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(2)~クラウドファンディングのおしらせ~ 「自分ごと化会議in松江」第2期
全国初!住民による住民のための無作為抽出の住民協議会
第1期(2018年~2019年)は「原発を自分ごと化する」をテーマに議論。
『9つの提案』としてまとめ、中国電力、松江市長、島根県知事、世耕経産大臣(当時)にお渡ししました。
今回のテーマは「自然エネルギー」
まちの問題を「自分ごと」として考える市民を増やしたい!自由に安心して対話する場を作りたい!
そうした思いで、「自分ごと化会議in松江実行委員会」は活動しています。
☆ 目標金額は 50万円 ☆
ご支援は、3000円から承っております。
リターンは金額によって
・自分ごと化会議in松江「提案書」
・詳細レポートデータ
・共同代表3人と1時間のオンラインCAFEの権利
・共同代表福嶋浩彦氏が、あなたのまちに出かけてプロジェクトの報告
ご支援いただいた資金の使い道は以下の通りです。
・会場使用料
・講師、問題提起者への謝礼
・無作為抽出者への会議案内 印刷・送付費用など
詳細はこちらから → https://readyfor.jp/projects/kaigi2027
皆さまにもこの取り組みに、支援という形でもご参加いただければ幸いです。
※自分ごと化会議in松江 第2期 事前勉強会(動画)
昨年11月に、自分ごと化会議の活動や意義を知っていただくための勉強会を開きました。
YouTubeでの視聴が可能です。こちらから → https://youtu.be/4vf0u3UPtz4
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【3】ドイツのコロナ対策(2)―メルケル首相の発信とメリハリある財政政策
日本総合研究所理事長 翁 百合
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ドイツでは、連邦政府と州が合意したガイドラインに基づき、感染拡大への対策を両者が試行錯誤しながら連携して行った。2020年3月にメルケル首相は国民に対して、危機に直面しており、真剣に受け止めるようテレビメッセージを発出し、これは共感を持って受け止められた。連邦レベルでの取り組みを強化して連携を図りロックダウンを行った一方、各州は感染状況や地域の特性に応じて、連邦政府の統一的ガイドラインに上乗せした形で規制を実施した。地域の実情に応じた措置がとられたことを評価する向きは多い。
また、平時からドイツ政府が財政の健全性を維持してきたことから、危機時に大胆かつ迅速に操業短縮手当などの助成金や補助金などの財政支出、そして減税が可能となった。助成金等の給付には、納税者番号などを用いることで、インターネット上で迅速に対応できた。
付加価値税率を7月から半年間19%から16%に引き下げたほか、EV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)の購入補助を増額し、環境対策やデジタル化重視の政策を推進している。このためEV、PHVの新規登録台数は大幅に伸び、ドイツは2020年の経済の落ち込みは欧州主要国の中では小さい見込みである。
連邦政府はコロナ対策のため国債を大量に発行し、債務残高の対GDP比率は77%となった。ただ国債発行と同時に、政府はコロナ対策の事業費と税収減を合わせた歳入不足額を埋め合わせる計画を作り、2023年以降20年間にわたる公債返済計画を国会で既に決めている。将来世代への責任を果たしていることは参考にすべきだ。
なお、イタリアやスペインなどが恩恵を受ける92兆円規模のEU復興基金に対し、ドイツは7月に積極的な支持に回った。このことは、ドイツの財政の将来的な健全性には懸念材料となり得るかもしれないが、EU財政統合を目指すリーダーシップの一歩と受け止められる。
連邦政府・州政府のコロナ対策を大多数の国民が支持している一方で、春に行われたロックダウンは州が上乗せ規制したこともあり、国民の行動制約は厳しいものとなり、国民の一部に不満は燻っている。規制に違反した場合には、州の秩序局や警察が取り締まり、制裁金も科された。ドイツの厳格な規制は、自主的な行動変容を求めた2020年のスウェーデンや日本の対応とは大きく異なる。そのためロックダウンは、憲法で定められた自由を損なうとの訴えが各州で起こっている。裁判所の判断は、感染初期の政府の対応については政府の勝訴が多かったが、時間が経つにつれて、判決も区々(まちまち)の状況となっている。8月には、ベルリンで不満分子による2万人規模の抗議デモも行われた。
また疫学の観点から、ロックダウンを実施する必要があったか、との懐疑的な見方も出ていた。たとえばロックダウン前から感染は落ち着いていた、幼稚園や子どもの休校措置が不要であった、欧米諸国全体でみてもコロナへの恐怖から緊急入院が4割減少し、心筋梗塞の患者の健康に大きく影響した、といった医師の指摘もある。ただ、秋以降の感染急拡大で、再び12月16日から1月までロックダウン措置の採用に追い込まれた。
以上、充実した集中医療態勢とデータを活用した病床や患者の調整、インセンティブを活用した迅速な危機対応、科学的知見の活用、連邦レベルの連携と地方自治のバランス、非常時に備えた財政の健全性確保といったドイツの取り組みは、我が国にとって参考になる点が多い。
秋以降の感染再拡大は欧州や米国のみならず日本でも深刻化し、また英国では変異種のコロナ感染が拡大するなど収束の見込みは立っておらず、長期戦となっている。従って、どの国のアプローチが適切なのかについては、もう少し状況をみないと判明しない。日本も各国の様々な取組も参考にしながら、コロナ感染防止と人々の暮らし、経済の回復を両立する舵取りに最善を尽くすことが求められている。(ドイツ おわり)
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翁 百合(おきな ゆり)
日本総合研究所理事長。 NIRA理事。 京都大学博士(経済学)。84年日本銀行入行。日本総合研究所に移り、主席研究員などを経て2018年から現職。この間、慶應義塾大学特別招聘教授、産業再生機構産業再生委員、規制改革会議委員、未来投資会議・構造改革徹底推進会合「健康・医療・介護」会合会長などを歴任。現在、金融審議会委員、産業構造審議会委員、内閣府「選択する未来2.0懇談会」座長などを兼任。著書に『金融危機とプルーデンス政策』日本経済新聞出版社など。
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(編集後記)
小さい頃、日本昔ばなしは身近にあり、世代を超えた共通認識だったと思う。
日本各地の民話も、その地で代々受け継がれてきた知恵や工夫を伝える方策。
そうした伝統の中に、持続可能な社会のヒントが詰まっているのではと思うのです。
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********** 読者の声 **********
翁先生へ
拝読させていただきました。
日独首相の発信力が比較され能力の違いが露呈していますね。
それにしても、今日における国家の安全保障のカテゴリーが、軍事だけでなく、エネルギー、食糧、環境、金融、ウイルスのパンデミック等、多岐に及ぶにもかかわらず、この国は依然として軍事のことしか頭にないからコロナで迷走しているわけで、官僚と政治家の思考力レベルの低さは国民にとって不幸でしかありません。
どこをどうれば少しはましな政治行政が行われるのか、先生のご所見を次回以降に伺えたら幸いです。
自治体職員 N氏