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【4】特ダネではないけれど(39) ジョン万次郎
新聞記者 松浦 祐子
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我が家の本棚には「ジョン万次郎」についての本を集めた一画があ
ります。久しぶりに、いくつかの本を取り出し、
パラパラと読み直しました。きっかけは米国のミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさん
が、警察官に膝で首を押さえつけられて死亡した事件を機に、人種
差別に対する抗議デモが広がっているというニュースでした。
ジョン万次郎は、1827年に現在の高知県土佐清水市の漁師の子どもとして生まれますが、14歳の時、出漁中に漂流。米国の捕鯨船の船長に助けられ、米国東部で育てられます。捕鯨船の副船長にまでなり世界を航海した後、ゴールドラッシュに沸く西海岸の金山で資金を稼いで、日本への帰国を果たすという数奇な運命を生きます。その英語力と知識を評価され、日米修好通商条約批准書交換のための使節団(1860年)を乗せた咸臨丸にも乗り込みました。
私は高知県に赴任していた時にジョン万次郎に興味を持ち、米国での足跡をたどるとともに、万次郎に触発されて日米の懸け橋となるべく奔走している人々を取材し、連載記事を書きました。私の記者人生の中でも、強く印象に残っている仕事です。こうしたことから、米国という国を考える時、万次郎は、私にとって大きな手がかりを与えてくれる存在です。
日本にいれば教育を受けることもできなかったであろう漁師の子が、異国の地で教育を受け、能力を開花させていきます。上級の学校に進み、数学や航海術も学びました。子孫の方に万次郎の手紙を見せてもらいましたが、美しい筆記体の文字で、礼儀正しい内容の英文がつづられていました。人の価値は出自ではなく、生きていく環境で育まれるのだと強く思いました。
当時の米国にも人種差別はあり、養父は、それまで通っていた教会が、肌の色が違う万次郎が来ることを拒否したため、教会を変えざるを得なかったそうです。それでも万次郎は米国のすばらしさとして「合衆国の大統領は、代々引き継ぐものではなくて、学問才覚のある者が民衆による選挙で選ばれる。4年が任期だが、能力と支持があれば民衆によって再任される」といったことを書き残しています。江戸時代の日本人から見たら米国は、未知の概念である「民主主義」「平等」を推し進めている新しい国と感じられたことでしょう。
その大統領選挙で、2008年には、黒人のバラク・オバマ氏を大統領に選びました。しかし、だからといって人種差別が解消されたわけではないということを、今回の抗議デモは示しました。オバマ氏就任からこの間の米国社会の雰囲気について、妻のミシェル氏が著作「BECOMING(邦題:マイ・ストーリー)」の中で、思いをつづっています。「バラクと私は、ある自覚とともに生きている。私たちの存在自体が挑発的なのだという自覚だ。今、この国では、様々な場で、少数の人々(黒人)が徐々に重要な地位をしめつつある。私たち一家はその最も顕著な例だった。我々のホワイトハウス入りは、多くの反動的な恐怖心や恨みを呼び起こしている。その憎悪は根強く、深く、依然として危険をはらんでいる」と。オバマ氏は、白人の母親と黒人の父親から生まれ、インドネシアでの数年を除けば、幼少期は主に白人文化の中で育てられていています。生まれた時に肌の色が白色だったら、こうした「自覚」をもつことを迫られただろうか。一方で、彼がハーバード・ロー・レビューの編集長に選ばれた時には、「黒人初」ということで注目されました。
最近は海外の良質なドキュメンタリーや映画、ドラマを簡単に見ることができます。奴隷制に始まる人種差別の歴史、黒人と警察をめぐる問題についても、初歩から分かりやすい形でまとめられた作品が数多く作られています。フロイドさんの事件のようなことは繰り返し起こってきたこと。司法の場でも、黒人の命が失われたとしても、警察側は罪に問われないことが続いてきたこと。そうした経緯を踏まえて、「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動は続けられてきたこと。根深い差別は構造的で、克服はたやすいことではなさそうです。それでも人種を越え、白人の人々の中にも民主主義や平等といった国の理念に反するトランプ政権の振る舞い対して、意義を申し立て、デモに参加する人が出てきているようです
社会が変わっていく時、既得権を持つ人々はそれが脅かされることに対して恐怖心を抱きがちです。肌の色だけでなく、性別や、年齢、国籍、考え方、支持政党などによっても、そうした恐怖心は呼び起こされます。自分とは「違う」人に対して、執拗に攻撃するような言動は、日本でも増えていると感じます。発した言葉の内容ではなく、発言者の属性で、良否を判断するような傾向も見られます。
米国での対立と分断は、違う見え方で日本にも存在しています。米国は、この状況をどうやって乗り越えていくのか。我が国の今後のためにも、米国の動向から目が離せそうにありません。
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松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)
1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当、新潟で県政取材、内閣府担当などを経て、今は、科学医療部で医療分野を担当。
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(編集後記)
「#うーとーとー慰霊の日」6月23日は、沖縄戦などの戦没者を追悼する日でした。
敗戦記念日と違い、この日を境に沖縄の戦争が終わったというわけではありません。
今なお、辺野古、高江のヘリパッド、オスプレイの飛行、夜も騒音の中で暮らしています。
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********** 読者の声 **********
1)松浦記者の主張に接するたびに正義感の強い真っ直ぐなお人柄と拝見します。それは置いておき、小生は還暦過ぎの年寄り故に、物事に対して少々捻くれた見方をしてしまいます。米国におけるこの度の事件を「白人対黒人」、「黒人差別」、「米国の闇」などとの論調には賛同しかねます。このような構図に仕立て上げることこそが差別と混乱を助長するのです。(黒人差別を持った者がどうかは知りませんが)一人の白人警官という属人が起こした事件として片付ければよいことで、白人と黒人の対立を煽るような報道の在り方こそ偏見・差別思想を感じます。米国は黒人が大統領になれる国です。そして(真意は別に)そよの国の国民がそよの誘拐国家に関心を示してくれる国です。金持ちのボンボンや政治家の二世三世が総理大臣になるような、また、誘拐された自国民の救出に手をこまねいているどこかの国よりよほど近代的で責任ある国家ではないかと比較してしまうのが小生の悪い癖です。N氏
2)回りくどい言い方をすれば、里山とか雑木林は人手が入った自然で、今やヒト抜きでの生態系保全は不可能。ことによると、それと同じかもしれない。すなわち、戦後米国から入り込んだ外来種(生物的のみならず文化的なものを含め)により破壊された日本の風土は、すでに外来種抜きには成立しないのかもしれない。とはいえ、長い年月をかけて自然風土とマッチングしてきた伝統的文化風土ではない、即席文化風土は「台風型」と呼ばれる日本の厳しい自然風土の下で存続できるとも思えない。とすれば、後は滅亡を待つのみ。前置きはここまでとして本題に入りますと、松浦さんの取り上げた「ジョン・マン」は わが子ども時代の憧れでした。それは「人種差別」が騒がれるようになった今も変わり ません。もちろん、質・量的な差異は別として日本にも同様の問題はあります。小生は、昔から第三国人とか被差別部落民などの同級生と遊んでいましたし、日本の大学で初めて任期制の無い外国人教員の採用に踏み切ったりしてましたから、口先ばかりの差別反対論者よりよほど差別意識が薄い日本人だと自負しています。しかし、前にも言いましたが、日本の風土を愛し守る気持ちの無い外国人には日本に来て欲しくないし、さっさと出て行って欲しい。 理由は、根っからの「生態主義(もともと小生の造語)」者だからです。その点、最近こそ一部に綺麗事を言う人も出てきましたが、しょせん現地の風土・伝統文化を破壊して今の繁栄を構築した米国での差別論とは全く異質です。しかし、多分、松浦さんのような人には、この差は分からないと思います。・・・ということで、冒頭の世代ギャップとなる次第です。 小野五郎氏