【No.82】寄付市場創造宣言 |構想日本政策委員  跡田 直澄|
2003.01.24

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寄付市場創造宣言
JIメールニュースNo.82  2003.1.24
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■■ 目次 ■■
《日本の風景》寄付市場創造宣言
~21世紀が求めるNPOのための新たな市場~
構想日本政策委員 跡田直澄

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《日本の風景》寄付市場創造宣言
~21世紀が求めるNPOのための新たな市場~
構想日本政策委員 跡田直澄

日本の社会経済システムを憂い、改革が叫ばれている。直近では道路
公団や郵便局の民営化の行方がホットな焦点となっているが、永田町や
霞ヶ関の旧来の論理が優先され、国民の存在は遠い。我々個人でもでき
る改革の処方箋として、もう一つの新たな市場の創造を提案したい。
それは、個人がNPOに寄付金を提供する市場だ。NPOのための寄
付市場と呼ぼう。個人がNPOに資金を供給し、その見返りとして、政
府や営利企業では不十分な提供しかできない公共サービスをNPOから
受け取るためだ。公共サービスはこれまで主に政府が我々に税金の見返
りとして供給してきた。しかし、衣食住が満たされた経済大国では十分
に機能せず、NPOに任せた方が得策である。なぜなら、機動性と柔軟
性に富んだNPOは政府よりも多様な市民ニーズを効率よく汲み取って
くれるからだ。
最大の問題は、NPOが活動資金を調達するシステムの未整備にある。
NPOは営利企業と同様に一つの組織体であることに変わりないが、営
利企業には株式市場を初めとした様々な資金調達の場があるのに対して、
NPOにそうしたシステムが整備されていないし、業績の評価機能を併
せ持つ市場は存在しない。営利企業の代表格である株式会社の歴史は4
世紀に及び、20世紀のメイン・プレイヤーに成長した。その大きな要
因は資金調達の場として株式市場を整備してきたからに他ならない。
NPOが21世紀のスター・プレイヤーに成長するかどうかは、資金
調達のシステムを整備できるかどうかにかかっている。これは難しいこ
とではない。株式会社には金銭的で直接的な自己利益を求める投資家と
いう資金提供者が存在するが、NPOには金銭には置き換えにくい公共
的で間接的な自己利益を求める寄付者という資金提供者を育てればよい
のだ。資金提供者からみて、株式会社もNPOも追究するリターンの種
類が違うだけであり、この意味で投資=寄付である。
そこで、株式市場に類似したNPOのための寄付市場の整備を試みる。
寄付市場の概略は、活動資金を求めるNPOが寄付市場にエントリーし、
寄付者がNPOの活動を分析して寄付金を出す。カネと情報をスムーズ
に流すために、NPOには活動目標を書いた寄付証書を発行してもらい、
その証書を寄付者が買い取ることで資金を提供する仕組みだ。NPOの
活動への評価が高まれば寄付は増えるが、逆に活動評価が低くなれば寄
付は集まらず、市場から退場を迫られる。さらに、寄付者へのインセン
ティブを高めるために、株主優待券のようなクーポンを発行する。NPO
は寄付額の5%分のクーポンを発行し、クーポンを受け取った寄付者は
NPOが行うサービスの対価として円を使うのではなく、このクーポン
を使えるようにする。このクーポンは市場にエントリーしている複数の
NPOで利用できる、いわゆる地域通貨といえよう。
寄付証書の購入が公共的で間接的な自己利益への投資であり、クーポ
ンの利用は金銭的で直接的な自己利益の獲得である。公共性と間接的な
自己利益の追求を同時に併せ持つ仕組みがNPOのための寄付市場であ
る。
我々はNPOのための寄付市場を運営するための法人「寄付市場創造
協会(仮称)」を設立する準備に入った。多くの個人がワン・コインを
NPOに寄付する新たな市場は誕生間近である。
追記:「寄付市場創造協会(仮称)」の設立・運営に興味を持ち、ボラ
ンタリースタッフを希望される方は、慶応義塾大学商学部跡田研
究室まで問い合わせていただきたい。
(E-mail: atoda@fbc.keio.ac.jp )

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