【No.58】アメリカの民主主義
2002.08.02

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アメリカの民主主義
JIニュースNo.58  2002.8.2
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■■ 目次 ■■
1.《コラム》アメリカの民主主義
2.《J.I. Action Summary》
3.《お知らせ》
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1.《コラム》アメリカの民主主義

今回、単なる旅行日記ではありますが、ちょっと堅めな話を一つ。
1.アメリカ合衆国憲法
先日、アメリカのボストンへ行った。僅か2世紀余りの歴史しかない
アメリカであるが、ピューリタンが最初に上陸し、また独立戦争の舞台
ともなった「古都」の趣きを感じさせる街でもある。以前、留学生とし
て2年間過ごした街でもあり、今回、久しぶりにフリーダム・トレイル
(赤ペンキで道筋を示した史跡巡りの歩道)を歩いてみた。

ベンジャミン・フランクリンの銅像や、独立戦争発端の合図を送った
オールド・ノース教会を眺めながら街外れまで歩いていくと、1797年進
水の「無敵」軍艦、コンスティチューション号が海に浮かんでいる。そ
の船名を文字通り訳せば、憲法、国制、国憲、政体ということになる。
旧日本海軍の軍艦は「やまと」、「むさし」、「みかさ」等、仮名であ
れば三文字で統一されていたが、この辺の違いがお国柄なのかも知れな
い。
1787年制定のアメリカ合衆国憲法は、民主的な近代成文憲法としては
世界最初のものとされる。その当初の姿は、「国政の枠組み(Frame of
Government)」である国家の統治システムのみを規定したものであり、
いわゆる人権規定である「権利章典(Bill of Rights)」が付加された
のは4年後、1791年の修正10ヵ条によってであった。当初、人権規定が
不要とされたのは、連邦政府は人々から「信託」された権力のみを行使
し得る存在であるから、という理由による。1776年のアメリカ独立宣言
の理論的基礎にもなったジョン・ロックの所説によれば、人々は「合意」
によって国家という政治社会を作り、国政上の権力を統治者に「信託」
するとされる。従って、論理的には、人々が統治者たる連邦政府に「信
託」した以上の権力を行使することはそもそもできないと考えられたの
である。
2.国家のガバナンス構造
あらゆる組織において、制度的な枠組みの下で意思決定がなされる。
組織としての意思決定を左右するのは、その組織の内部及び外部で利害
関係を持つ個々の主体のうち、①誰が(どの機関が)意思決定を行うの
か、②その意思決定は誰のどの利益にいかなる影響を与えるのか、③そ
の意思決定の内容と手続は適正であったか、そして、④それを誰が(ど
の機関が)監視するのか、といった制度的な枠組みである。これを「ガ
バナンス」の構造と呼ぶ。
国家も一つの組織形態である。従って、国家のガバナンス構造を規定
する憲法上の統治システムの下で国家としての意思決定がなされる。
国家のガバナンス構造を設計する、または再構築するに当たっては、
その構造の下で行動し、意思決定を行う人間の本質にまで遡ってその枠
組みを考えなければならない。あらゆる人間の行動や意思決定は不確実
性を伴うが、人間の本質というものを理解することを通じて、いかなる
制度的枠組みの下であれば、人間はどのような行動や意思決定を行う傾
向にあるのか、ある程度の予測が可能になると考えられる。
3.ジョン・ロックの仮定
彼は、まず、人間の生まれながらの「自然状態」として、自然法の範
囲内において完全に「自由」かつ「平等」な自立的な人間像を仮定する。
彼の言う自由とは、誰もが自分の好き勝手をしてよいという自由ではな
く、理性に基づき自分自身の意思に従って行動する自由を意味する。よ
く言われるように、自由には責任が伴う。従って、自由かつ平等な人間
は、同時に、自由に伴う責任と他者に対する寛容さを求められる。
アメリカ独立宣言とそれに続くアメリカ合衆国憲法は、このような自
立的な人間像を前提として設計されている。これは、ある種、他者から
の影響を受けやすく、時代や社会の移り変わりに流されやすい私のよう
な弱い人間にはやや酷な話なのかも知れない。他者や社会に対する依存
や不寛容というのは、人間にとって避けがたい一面でもある。
圧倒的な経済力を誇り、人々を魅了するアメリカ、傲慢さを撒き散ら
し世界から嫌われるアメリカ。相反する面を併せ持つ国家の源流は、ガ
バナンス構造の前提となる人間像にあるのかも知れないと思いつつ、旅
を終えた。
(文責:政策アナリスト 桜内 文城)
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2.《J.I. Action Summary》
■構想日本の7月の主な活動状況(政策プロジェクト)■
(1)外交機能強化
外交機能の強化に向けた「議論のたたき台」を作成
・外務省記者クラブで発表(7/22)
http://kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=136
「外務省」改革を「外交」改革へつなげるためのプロモーション
・国会議員への説明(7/22~)
・朝日新聞「私の視点」:”外務省改革 外交から内閣の能力高めよ”
(7/24)
・J.I.フォーラム「日本の外交はなぜ弱い?」(7/30)
なお、構想日本のホームページ上(掲示板)で議論を展開中
http://kosonippon.org/wp-manager/bbs/index2.php3?i_forum=5
(2)特殊法人改革(道路公団)
構想日本を事務局とする「シャドー・コミッティー」発足
(「日本再建のため行革を推進する七百人委員会」との共同事業)
・「道路公団関係四公団民営化推進委員会」を応援するため、委員会
での議論に必要なデータやコメント、対案を提供
http://kosonippon.org/wp-manager/prj/c/?no=999
(3)国と地方(税財政改革)
国と地方の税制のあり方に関する具体的提言に向けた作業・分析
・三重県政策研究センター編集「地域政策-あすの三重」:”自治体
現場から、事業分担のあり方を見直す”(7/20)
・地方交付税改革、自治体の自主財源強化など、国と地方の税制のあ
り方についての提言を作成中
(4)公会計
「地方公会計研究会」第12回会合開催(7/16)
・「ニュージーランドとオーストラリアにおけるニュー・パブリック
・マネジメントの動向」に関する勉強会
(5)国会議員アンケート
「公益法人制度と寄付税制」に関するアンケートを実施(7/17)
・「公益性」を判断する仕組み、税制上の優遇措置の基準、など
http://db.kosonippon.org/enq/jidb007.pdf

上記のほか、「エネルギー政策」、「年金改革」、「公益法人制度改
革」などの政策プロジェクトが進行中。
詳しくは、 http://kosonippon.org/wp-manager まで。

(文責:政策ディレクター 冨永朋義)
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3.《お知らせ》

構想日本では、定期的に国会議員に対するアンケートを行い、「構想日
本 政治家・政策データベース」( http://db.kosonippon.org/ )に
掲載しています。
第5回目のテーマは「公益法人改革と寄付税制」です。現在、政府は、
公益法人制度の見直しについて検討を進めています。議論の中心は、
(1)「公益性」の判断のしくみと、(2)税制上の優遇措置です。
約100年ぶりの見直しとなる「大改革」について、各議員にアンケート
を実施致しました。連日、続々と、回答が寄せられております。
アンケートの詳細・回答結果は、 http://db.kosonippon.org/
をご覧下さい。
尚、集計結果は、9月頃に公表する予定です。どうぞ、ご期待下さい。
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