【No.173】「現場」をみて考える中小企業政策のあり方
2004.11.12

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「現場」をみて考える中小企業政策のあり方
JIメールニュースNo.173  2004.11.12
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■■ 目次 ■■
1.《「現場」をみて考える中小企業政策のあり方》
2.《第89回「J.I.フォーラム」のご案内》

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1.《「現場」をみて考える中小企業政策のあり方》
構想日本政策スタッフ  福場ひとみ
99.7%。これは日本の全企業における中小企業数の割合である。中
小企業に対して行われている、現在の中小企業政策は本当に役に立っ
ているのだろうか。
東京都大田区。古くから製造業の中小企業が数多く集まる街である。
最近は国際化による生産移転で、大企業の下請をしていた中小企業の
倒産件数が増えた。中小企業はかつての元気をなくしているという声
も聞く。そんな中、彼らは何に取り組み、また行政はどんな支援をし
ているのか。
そんな折、「お~ing ニッポン!」( http://www.o-ing.jp/ )とい
うグループの存在を知った。大田区の中小零細企業が集まり、共同受
注や共同開発に取り組んでいるという。グループが拠点を置く、小学
校跡地を再利用したインキュベーション施設「BICあさひ」を訪れた。
毎週木曜日、19時から22時過ぎまで本業の仕事を終えたメンバーが集
い、話し合う。
中小企業の現場の意見を、代表の栄商金属の佐山行宏氏に聞いた。
氏は99年に前身となる勉強会を立ち上げた。きっかけはやはり不況だ
った。「ITバブルが崩壊したころ、見る見るうちに受注が減ってきた。
このままではいけない、何か出来ることはないか思いました」。そし
てグループとして注文を一手に請ける窓口を作った。単なる共同受注
ではなく、「おーingニッポン!」では「競争受注」という独自の方
式で行っている。競争受注とはグループの3つの専門商社が競いあっ
て3つの見積もり案を立てる仕組みだ。
それぞれの専門商社が部品と部品を繋ぐコーディネーターとなって、
取引経験のある約300社の工場から最適な工場を選別、見積もり案
を用意する。注文を出した企業は3つの選択肢から納期やコスト、品
質に合わせて最適なものが選べる。より良い見積もりを出さなければ
受注は出来ないので、競争力を引き出す仕組みになっている。現場を
通じた取引経験から、部品同士の組み合わせだけではなく人間同士の
相性も踏まえ、最適な組み合わせを事前にマッチングする。経験に培
われた「目利き」のなせる技ともいえる。
実は行政も中小企業同士を引き合わせるビジネスマッチングや、中
小企業にグループを作らせて共同受注、共同開発を促している。こう
した行政主導による動きと、民間のやり方には違いがあるのだろうか。
「行政が行っているビジネスマッチングがありますが、引き合わせの
失敗が起こりやすい。公職の立場では、あらかじめ企業の組み合わせ
を個人の目利きで選択することは出来ない。非効率な斡旋となってし
まいます」と言う。
2004年度も中小企業対策予算として約1700億円がつぎ込まれている。
行政は中小企業に対して様々な補助金を出しているが、「お~ingニッ
ポン!」は利用していないと言う。「一度は役所に行きました。支援
額は事業規模の二分の一で最大300万円が貰えるもの。私たちはもっと
ささやかな規模でやっていますから」。
補助金は支給額の上限が決まっているが、どうせ貰うならば最大の
300万円を貰おうとする。そのためには事業規模を無理に拡大しなけれ
ばならず、必要のないものを購入するなどして、予算を多額に見積も
ることになる。ビジネスの鉄則は、少ないコストで高い収益を上げる
ことだ。それにも関わらず補助金は事業のコスト感覚を麻痺させる。
補助金の無駄はそれだけではない。申請するにも大きな手間がかかる。
「補助金申請をするには膨大な資料が必要となります。それにエネル
ギーを注ぐくらいなら、商品の売り方を考える時間にあてたい」となる。
「みんなタダで貰えると思ったら欲しがらないでしょう。こうして小
瓶につめて100円で売るんです」。共同開発した商品、切削用油剤
「切削琢磨」(せっさたくま)を展示会に向け、メンバー全員で段ボ
ールに箱詰めしていく。夜も10時近くなった。私はこの場所を去った
が、彼らの作業は続いた。
政治家を中心に「中小企業を助けるためにさらなる支援策が必要」
と言う声は多い。しかし、現在実施されている政策は有効に活用され
ているか見直すことこそが必要ではないだろうか。中小企業政策は現
場で「がんばっている」中小企業を支援するものでなければいけない。
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2.《第89回「JIフォーラム」のご案内》
構想日本でこんな本を企画しました(11月24日発売!)
『浮き足立ち症候群-危機の正体21-』
-21名の専門家に様々な「危機」とそれを生み出す
世の中について語って頂きました -
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もう10年以上も家庭、学校、会社、様々なところで「危機」とか「破
綻」といったことが叫ばれています。私たちは、そんな言葉に浮き足立っ
てしまってはいないでしょうか。 そこで、ちょっと腰をおちつけて、ど
こに本当の問題があるのか考えてみませんか、という趣旨の本を構想日本
の企画でつくりました。
構想日本の政策づくりと共通の問題意識を持つ21名の著者の中から、医
療の問題を鋭く提起した「ブラックジャックによろしく!」のモデル南淵明
宏氏、禅僧から医師(僧医)をめざす対本宗訓氏、食の安全について適確な
指摘をしている小若順一氏に、本当の問題はどこにあるのか議論して頂き
ます。
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日 時 : 平成16年11月30日(火)
会 場 : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演 : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者 : 南淵 明宏(大和成和病院心臓病センター長心臓外科部長)
小若 順一(食品と暮らしの安全基金事務局長)
対本 宗訓(禅僧・医学生)
コーディネーター: 加藤 秀樹(構想日本代表)
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参加ご希望の方は、11月29日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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所属
ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
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お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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