【No.120】自治の抜け落ちた国政論議は砂上の楼閣だ
2003.10.31

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自治の抜け落ちた国政論議は砂上の楼閣だ
JIメールニュースNo.120  2003.10.31
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■■ 目次 ■■
1.《首長リレー(2)》自治の抜け落ちた国政論議は砂上の楼閣だ

2.《読者の声》給食選択制と民営化について一言
3.《第77回「J.I. フォーラム」のご案内》
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1.《首長リレー(2)》自治の抜け落ちた国政論議は砂上の楼閣だ
北海道ニセコ町長 逢坂誠二

●釈然としない「マニフェスト選挙」
10月10日、衆議院が解散された。各陣営、各地域では、11月9日
の投票日に向け、選挙モードに突入している。今回の総選挙は、「マニフ
ェスト」がキーワードだという。マニフェストの定義は難しいが、これま
での公約との違いは、個別政策ごとに実施の期限を明示していることと、
それを実現するための財源に言及していることだという。マニフェストに
よって政策の競い合いによる選挙戦が実現するし、当選後の公約達成率を
明確にすることができるなど、その効果は大きい。マニュフェストの登場
は、日本の選挙に大きな変化をもたらしつつあるのは事実だ。にもかかわ
らず、私の気持ちは釈然としない。
●市町村合併:国政での議論が不十分
現在、全国の市町村の約半数が、市町村合併に関する法定協議会を立ち
上げ、自治の枠組み、将来の自治のあり方を巡って、さまざまな議論を進
めている。しかしこの議論は、充分に検討されたうえで開始されたもので
はない。「規模が大きければ自治体としての能力が高いという直感」と
「見かけ上の財政の効率論」を前提にして、中央政府と官僚のなかば強制
的な誘導によって進んでいる。そこには、自治の現場の息づかいは、まっ
たく聞こえない。もちろん財政難や少子化などの中で、日本の自治体の変
化は必須だ。しかし、その変化の選択肢は、広域的行政手法の推進や単独
自治体での生き残り策など、合併推進だけではなく本来は多様なはずだ。
ところがこうした選択肢を、国政の場で充分に議論した形跡は見当たらず、
規模の拡大と見かけ上の財政の効率化が、すべての議論の暗黙の前提とな
って、国の基礎的なかたちづくりが進んでいる。
●マニフェストの「内容」の議論は?
私は、マニフェスト選挙は悪くないと思う。しかし、その内容が空疎な
ものであるならば、なんの意味も持たないものになってしまう。そもそも
この国のあり方はどんなものであるのかの充分な議論もないままに、具体
論だけが進んでいる。マニュフェストは、あくまでも器であり、政策の本
質ではない。よい器を手にしただけで、そこによい食べ物が盛られるとは
限らない。マニフェストという器に惑わされてはいけない。一見、見栄え
の良い食べ物が盛られているように見えるが、その安全性や体に与える影
響を十分に検証しなければならいないし、不足しているものを検証するこ
とも必要だ。特に自治のあり方に対する言及が少なすぎる。国のかたちを
論ずるうえで自治の問題は避けて通ることができない。なぜなら自治は民
主主義を支える基礎となるものであり、自治のあり方には、国のかたちを
帰納的に規定する側面がある。しかも、生き生きとした自治の実現が国力
を高める柱の一つになることは、歴史や諸外国の例が証明している。自治
をないがしろにした国が栄えた例は皆無だ。
● 「自治」の抜け落ちた国政選挙
衆議院選挙は国政選挙である。したがって自治の課題は取り扱いの枠外
だとの考え方があるとするなら、それは大間違いだ。仮に自治の問題であ
ったとしても、国全体の大きな制度や枠組みを論ずるのは国政の場にほか
ならない。しかし、必ずしもそれが多くの方には理解されず、ともすれば
自治が国政の盲腸的扱いを受けそうになる場面があり、それが私の釈然と
しない気持の根源だ。
●「自治」を国政の主要課題に!
マニュフェスト議論の中に、財政の三位一体改革や地方分権の推進があ
るが、自治の現場にいる首長として、その内容、議論は、現場の実態とは
縁遠い空疎なものにしか見えない。それは、国政に携わる皆さんが、自治
の課題を国政の主要課題と捉えていないからかもしれない。自治を語るこ
とは、国の大きな方向を語ることに直結していること、それを知らずして
この国のかたちを議論することはできない。国民の息づかいの聞こえる自
治の課題を真摯に受け止め、自治を国政の主要課題とすることが重要だ。
それが抜け落ちた国政論争では、国のありかたを明示できず、砂上の楼閣
を築いているに等しいものとなる。

==== プロフィール ====
1959年北海道ニセコ町生まれ。1983年北海道大学薬学部卒業後、
ニセコ町役場勤務、総務課財政係長などを経て、1994年11月から現
職、現在3期目。
国土審議会専門部会委員、北大高度法制研究センター研究員、北海道生涯
学習審議会委員、政策投資銀行北海道支店アドバイザリーボードメンバー、
札幌国際大学非常勤講師、自治体学会会員など
主な著書は、『わたしたちの町の憲法』(日本経済評論者)(以上、共同
編者) 『自治体再生へ舵をとれ』(学陽書房)、『非戦』(幻冬社)、
『いま首相公選制を考える』(弘文堂)、『自治体法務入門』(ぎょうせ
い)『地方分権と司法分権』(日本評論社)(以上、共同執筆) 『自治
の課題とこれから』(北海道町村会)など
電子メール: ohsaka@seagreen.ocn.ne.jp
個人のホームページ: http://www5a.biglobe.ne.jp/~niseko/
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2.《読者の声》給食選択制と民営化について一言
今回は、JIメールニュースNo.118で掲載した「《読者の声》給食選択制
と民営化 」についてのご意見をお送りします。
( http://kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html?no=126 )
米沢 武男様
米沢なみお様より
表記の件についてですが、最近の諸情勢からして、給食制度そのものに
わたくしも疑問を感じます。
そもそも、この給食制度が発足した経緯ですが、戦後の食糧難と各家庭の
食事事情の格差を是正し、児童の発育・成長に資する意味を込めて出来た
ものではないかというのが私たちの理解でした。
その後の復興と経済成長により、飽食とも言える国内事情を迎えているに
も拘わらずいまだにこの給食制度が継続されており、その内容は一層の充
実されたものになっています。そして、財政事情にも拘わらず、半ば必定
的な制度として認容され、地域の経済事情を無視してまでもその実現要求
は大変強く、議員(この場合、とくに革新系議員)の公約内容として絶対
的と言えるが如く盛り込まれてもいます。
しかし、実体は、公設施設が殆どであるため、各自治体の予算配分の大半
を占め、その施設設備の予算、それに携わる人件費、食材費等とそのコス
トたるや相当なものが掛かっています。これに伴い、予算の偏向的歳出が
危惧されるのも大きいものがあります。
それにも増して一番問題なのは、その趣旨に反して、家庭のお母さん方が
子どもの食生活に手抜きをしている事です。この問題は、あまり表面化し
ておりませんが、公然たる事実として子ども達や主婦の間で話題となって
いる問題です。
また、給食を受ける児童全員が同じ食事となると、その食べ残しによるゴ
ミの処理は相当なものがあるでしょう。
地域全体として考えても住民自治の観点から財政支出配分の不平等となり、
受益者負担を考慮するか廃止の方向が、時代の要請にあっているものと思
われます。
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3.《第77回「J.I. フォーラム」のご案内》
年金制度は不安でいっぱい?!
– どのような制度を目指すのか?-
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老後の安心を支えるはずの年金制度が不安でいっぱい?。先の選挙戦で
も最大の争点だったこの制度は、5年に一度見直されます。そして次の制
度改正まであと半年。
破綻寸前といわれるのは本当なのか。未加入者や保険金未払いが多くな
るのはなぜなのか。これらの問題は多くの日本人の関心事ですが、年金制
度は複雑で、そのどこに問題があるからなのかが分かりません。
だから、厚生労働省や政治家から制度の改革案が出されても、私たちに
とって好ましい選択肢はどれなのか分かりません。
そこで、年金制度と私たちが受ける影響、問題点の関係をまず整理し、
その上で研究者、提言者、政治家など様々な立場から議論して頂くことに
しました。
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日 時  :平成15年11月25日(火)
会 場   :銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  :午後6時30分(開場:午後6時00分)
講 師  :駒村 康平(東洋大学助教授)
討論者  :神代 和俊(放送大学教授)
渡辺 正太郎(経済同友会 副代表幹事・専務理事)
国会議員 数名ご依頼中
コーディネーター :高橋 万見子(朝日新聞社経済部)ご依頼中

主 催   :構想日本
定 員  :160名
参加費  :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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参加ご希望の方は、誠に恐縮ですが11月24日までに出欠の是非を
お知らせ願います。
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)

*シンクネット・構想日本の会員は8月からフォーラム参加費が無料
になっています。申込が必要ですのでご注意ください。また、申込
の際は会員番号をお知らせ下さい。
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