【No.103】下(しも)のお世話
2003.07.04

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下(しも)のお世話
JIメールニュースNo.103  2003.7.4
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■■ 目次 ■■
1.《信州の山の村から》下(しも)のお世話

2.《J.I. Action Summary》
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1.《信州の山の村から》下(しも)のお世話
長野県南相木村診療所長(内科医)
色平(いろひら)哲郎
患者さんの下の世話を、医者が担うことは少ない。ふだんは看護婦さん
まかせとなっている。しかしある特別の場面で、印象的な「大便様」との
出会いがある。
皆さんはご存じだろうか。
それは亡くなった患者さんのご遺体の最後のケアをする時である。最近
では自宅でご老人を看取ることが少なくなったせいだろうか、この大事な
ケアについて無頓着というか、ご存じない家族に時々お目にかかる。
度重なる往診に続いて、いよいよ私たち医師があたまを下げたとき、ど
うしよう。つまり九十歳代のご老人が、たとえば皆さんのおばあさんが、
ご自宅で息をひきとった際、皆さんならどう動かれるだろうか。
しばらくの間をおいて、私はご老人の肛門に綿をつめ、女性であれば陰
部にもつめ、鼻と口にも綿をつめて、下あごをきちんともちあげて口を閉
じるようにする。
そしてからだをタオルで清めてから、両手を胸の上で組んで固定する。
時には硬直がくるまでの間、ひもで固定することもある。
この一連の「作法」を故人が喜ぶのかどうか、全く不明である。尋ねよ
うもない。しかしある時、数時間家族まかせにして、ふとんが大便だらけ
になったことがあるので、私としては、積極的に取り組まざるをえない。
また、私ひとりでこの作業をすることは稀(まれ)で、ほとんどの場合
その場に居合わせている女衆(おんなしゅう)、つまり動けそうな女性方
に声をかけて、いっしょに取り組むことが多い。
なぜ女性に声をかけるのだろう。
それは無難だからであるが、この、うんちだらけになる作業が始まる時
が、それぞれの家人と故人になった方との、人間的なつながりのありよう
がよく分かる瞬間なのである。

母親を慕う息子は、すすんで身を乗り出して取り組むし、台所にかくれ
てしまう何人かもいるわけだ。
故人と各人との長い長い付き合い、他人には容易に介入できない人生の
総決算の時、と私は考えている。
前後して、私はムラの診療所にもどり、「診断書」を書くことになる。

大往生のときは、私なりの故人への思いで書き上げる。ひととなりを知
る故人であればあるほど、書くのに手間取ってしまう。逆にいえば、初め
て往診して看取ることになった方の場合など、思い入れなく書けるという
ものだ。
故人なりのプライドとこだわりを尊重し、見守り、そして見送る厳粛な
時間、それは遺されたムラ共同体各員にとっても光輝く晴舞台であったろ
う。
山のムラでは、出会いと同様、別れも個別のものである。

*色平(いろひら)哲郎氏
1960年横浜市生まれ。東大中退後、アジア諸国を放浪。
90年京大医学部卒、98年南相木(みなみあいき)村の初代診療所長と
して赴任。佐久総合病院内科医、長野県総合計画審議会委員、県保健医療
計画策定委員。
NPO・佐久地域国際連帯市民の会(アイザック)事務局長。
ホームページは、
http://www.hinocatv.ne.jp/~micc/Iro/01IroCover.htm

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2.《J.I. Action Summary》
■構想日本の6月の主な活動状況■
(1)国と地方(税財政改革)
6/20:構想日本の取りまとめのもと、「国と地方の税制を考える会
(16県の知事と構想日本からなる研究会)」の有志メン
バーによる緊急アピール
・「地域の活性化=日本の再生」につながる「三位一体改革」の継続
的な実行に向けて、以下の2点を経済財政諮問会議にアピール
a.「骨太の方針」は改革の第一歩、今後も具体的な議論を続けるべ

b.今回の補助金改革にあたって、どの補助金を削減するかは「現
場」である自治体の声を取り入れるべき
6/24:日本商工会議所・東京商工会議所政策委員会にて、「三位一
体改革」に関する構想日本の提言について講演
http://kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=187
(2)国会議員アンケート
「三位一体改革」に関するアンケートを実施中
http://db.kosonippon.org/enq/question.phtml?policy_set_id=15

(3)公益法人
民法34条改正を含む、「非営利活動法人制度」の抜本的な改革に向
けたキャンペーン
・6/24:「第5回info-netニュース」
http://kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=190
6/27、「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」が閣議決定
されました。主務官庁の「許可」によらず、「登記」で非営利法人の設立
を可能にするなど、構想日本の提言実現に向け、大きく前進です。
(4)教育
6/25:政策ディスカッション「国立大学法人化法案を議論する-
『知の拠点を守れ!』」を実施(@衆議院第1議員会館)
・学者、メディア、国会議員など約90名が参加
上記のほか、「年金制度改革」、「医療制度改革」、「エネルギー戦
略」などの政策プロジェクトが進行中。
詳しくは、 http://kosonippon.org/wp-manager まで。

(文責:政策担当ディレクター 冨永朋義)
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