- 【No.1078】◆寄稿文を公開◆アベノミクスで消えた国民の預貯金の利子所得 ―消えた70兆円― 構想日本理事 宇野 輝
◆寄稿文を公開◆アベノミクスで消えた国民の預貯金の利子所得 ―消えた70兆円― 構想日本理事 宇野 輝 #1078
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構想日本メールマガジン【No.1078】 2022.09.22 発行
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<目次>
【1】各地からの現場レポート
自分ごと化会議に参加した方の声をお届けします
【2】この先1か月の活動予定
【3】構想日本企画シリーズ ~「note」で、伝えたい 構想日本
2本の記事を新たに公開
【4】身の回りのツルツルとザラザラを仕分けてみませんか
皆さまからのツルザラをご紹介
【5】巻末寄稿文
第1回「アベノミクスで消えた国民の預貯金の利子所得 ―消えた70兆円―」
構想日本理事 宇野 輝
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【1】各地からの現場レポート
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静岡県令和4年度“ふじのくに”士民協働施策レビュー 9月10日(土)、11(日)の2日間
静岡県でのレビューは今年で14年目。無作為で選ばれた2000人の中から2日間で200名を超える県民評価者が参加しました。
10代から70代までの幅広い年齢層から、県が実施する6つの施策について多様な意見・提案が出されました。県民が議論した改善提案を、県は翌年度以降の施策に反映していきます。
【対象施策】
・いつまでも自分らしく暮らせる長寿社会づくり
・「文・武・芸」三道鼎立(ていりつ)の学びの場づくり
・活躍しやすい環境の整備と働き方改革・新しい働き方の実践
・魅力的な生活空間の創出・人の流れの呼び込み
・次世代を担うグローバル人材の育成
・誰もが理解し合える共生社会の実現
【参加者の声】
・自分の住んでいる自治体でも、どんな取り組みが行われているのか全然知らなかった(20代・男性)
・県の方たちの仕事を肌で感じられてよかった。自分も県民として何か役に立てるよう努力したい(40代・女性)
・介護などのテーマはまだまだ先のことなので考えたこともなかった。参加したことをきっかけに、自分のこととして考えたいと思う(10代・女性)
・県庁に来られるというのが面白そうだったので参加したけれど、実際に子どもを持つ身として、制度を使ってどんな教育を受けることができるのか知っておく必要があると思った。とても楽しかった(40代・男性)
・自分も他県から来た身として、外から見た静岡県の魅力を感じている。より多くの人に知ってもらうために、私もできることから始めてみたいと思う(60代・女性)
詳細は下記をご参照ください。
https://www.pref.shizuoka.jp/kikaku/ki-030/frontier/documents/rebyu.html
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【2】この先1か月の活動予定
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(1)奈良市 月ケ瀬地区第3回自分ごと化会議
無作為で抽出された市民がテーマごとに2班に分かれて議論します。5回シリーズの自分ごと化会議の第3回目が開催されます。
【日時】 10月6日(木)19時~21時30分(予定)
【場所】 月ヶ瀬ワーケーションルームONOONO(A班)、月ヶ瀬行政センター(B班)
【テーマ】共助・地域コミュニティの力を活用したヒト・モノの移動に関する地域課題解決(A班)
共助・地域コミュニティを強化する手法(B班)
(2)岡山県新庄村 村づくり自分ごと化会議
全国的にも珍しい議会主催の自分ごと化会議で、無作為で抽出された村民が村の子どもたちの教育環境のあり方について議論します。4回シリーズの自分ごと化会議の第1回目が開催されます。
【日時】10月16日(日)13時30分~15時30分(予定)
【場所】未定
【テーマ】子どもたちの未来につなぐ新庄村ならではの教育環境づくりとは
(3)山梨県大月市 大月市事業仕分け
大月市での事業仕分けは今年で2年目。無作為で抽出された市民が2班に分かれ、それぞれ5事業について評価を行います。
【日時】10月22日(土)9時30分~16時45分(予定)
【場所】大月市立大月短期大学 岩殿ホール 講義室
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【3】構想日本企画シリーズ ~「note」で、伝えたい 構想日本
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「note」で、伝えたい 構想日本
コロナ禍で様々な社会問題が顕在化し、行き詰まった日本社会に解決の一石を投じる《自分ごと化対談》を、noteにしました。
動画とは一味違った内容になっています。是非ご覧ください。
~「廃棄物は社会を映す鏡」― 誰もが自分ごとにするには ―(4)(5)~(石坂産業株式会社代表取締役 石坂典子氏)
<Chapter4,5> 自分の中で大切なことがちゃんとわかる生き方
― 若手スタッフから教えられたこと
― 自分ごとにする機会、場の大切さ
― 石坂典子氏が考える“ひとの幸せ”とは
― ザラザラ生活はクリエイティブ
◎記事全文はこちらから → https://note.com/hi_kato/n/n83bf952d1bc0
◎動画はこちらから → https://youtu.be/3FCWYaxLFQM
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~「下山」に学ぶ、いま、日本に必要なこと(4)~ 自分ごと化対談(登山家 竹内洋岳氏)
<Chapter5> 今の日本に必要な下山の哲学
― 登山における絶対条件 竹内洋岳の「型」
― そろそろ「下山」のしかたを考えるとき ピークを過ぎても登り続けようとする日本
◎記事全文はこちらから → https://note.com/hi_kato/n/n7b3fdc02f3a0
◎動画はこちらから → https://youtu.be/WZ7oFfP0Y80
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※note(ノート)は、クリエイターが文章や画像、音声などを投稿し、ユーザーが応援できるメディアプラットフォームです。
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【4】身の回りのツルツルとザラザラを仕分けてみませんか
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皆さまからいただいた“ツルザラ”をご紹介していきます。
◆ あなたの“ツルザラ”◆
・H氏のツルザラ
ツルツル >まとめサイト
・A氏のツルザラ
ツルツル >自分のあごひげ
ザラザラ >父のあごひげ
・匿名の方からのツルザラ
ツルツル >他人の気持ちを「察して」行動する、感情をコントロールする、アナウンサーや舞台俳優のような滑らかではっきりとした話し方、大縄跳びの輪にタイミングよく入る
ザラザラ >他人の気持ちはそもそも理解できない前提で行動する、過去の感情がふとした瞬間に蘇って怒りや悲しみが爆発する、何度もつっかえたり口が開かなかったりで伝わらない話し方、大縄跳びの輪になかなか入れないし、入ったところで引っかかる
◆「今の社会でこれが問題だ」と思うことを併せてお尋ねしています ◆
・N氏 >ジャーナリズムの衰退によって、ツルツルに向かっている?
・A氏 >ハラスメントが怖くて発言を控えてしまうことによるコミュニケーションの崩壊
・T氏 >人と接さなくてもいきていけること、言葉の簡略化
・K氏 >時間を有効に活用できるからこそ、目的のタスクのみ大量に取り組み、余裕から生まれるクリエイティブな発想が少なくなった
・I氏 >リモート化が進み対面で人と会う機会が減っていること、特に飲みニケーションがほぼ無いので職場の人がわからない、コロナの影響で子供達が外で遊ぶ時間が減っていること、公務員の人員削減により有事の際の対応が疎かになっていること
・A氏 >総理大臣や中央省庁の役人が平気で嘘をつき、それを正しいと言い切る社会
・匿名の方 >日本に蔓延る権力社会、男性優位の組織、権力抗争による組織の成り立ち
・匿名の方 >円滑なコミュニケーションを過度に強要される上にコミュニケーションの破綻が厳しく叱責され失敗に対して極めて不寛容になっている人間や組織の姿勢、そして叱責する側に限って失敗の責任をとる立場になると逃げ回ること
皆さまは、どんなことにツルザラを感じられますでしょうか。是非、ご参加ください。
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▼「ツルザラ仕分け」のお願い
1、あなたの身近で「ツルツル」だと思うものを教えてください。
2、あなたの身近で「ザラザラ」だと思うものを教えてください。
下記、グーグルフォームよりご回答ください。
https://forms.gle/EosCiVcQWP2tZfum9
<背景>
今の社会は、経済を成長させ「お金が増えるとみんなが幸せになる」が前提です。
そのために自由化・効率化=ツルツル化(効率の悪いものを極力減らすこと)をしてきました。
昔からの生活にある、デコボコ・ザラザラ(手間をかけてものを作ること、習慣の違いなど)を減らし、物もお金も人も画一化し、効率的に動かし、今やツルツル・ピカピカです。
構想日本はザラザラ社会の方が平和で、多くの人が幸せになれると考えています。SDGsとはツルツル化を見直そうという運動とも言えます。しかし、世界はまだツルツル化が進んでいます。
そこでまずは、ツルツルとザラザラの両方が選択できる世界二制度の仕組みを考えようと提案しています。
詳細はこちら 構想日本HP → http://kosonippon.org/wp-manager/turuzara_0308/
~参考書籍~
「ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ 」 加藤 秀樹(著)
Amazon書籍販売ページ: https://www.amazon.co.jp/dp/B08PL2VS1G
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【5】第1回「アベノミクスで消えた国民の預貯金の利子所得 ―消えた70兆円―」
構想日本理事 宇野 輝(うの あきら)
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岸田政権は「新しい資本主義」を掲げ、金融政策として「貯蓄から投資のための資産所得倍増プラン」を掲げた。金融庁は過去20年間、「貯蓄から投資へ」の旗振り役を続けてきたが、実効は上がらなかった。この岩盤を打ち破るため、第1に少額非課税制度(NISA)の恒久化を目指す。第2に投資家育成のための金融教育を国家戦略と位置付ける。第3に22年3月末の金融資産2005兆円のうち現預金は1088兆円(シェア54%)で、株式等及び投資信託は318兆円(シェア16%)である。この預貯金を投資に振り向ける金融機関のルートに対して、顧客ニーズに沿った商品開発や販売の環境を如何に整えるかである。
しかし、国民の足元では日銀の異次元緩和政策の維持により円安は進行し、加えて資源物価高によりインフレも進行するなど、国民生活へ及ぼす影響は大きい。労働者の最低賃金が過去最高の上げ幅を確保したといえども、その水準は時間当たり千円にも及ばず、名目賃金は過去20年横ばいの状態が続き、先進国の中でも下位に甘んじている。
この「資産所得倍増プラン」の目指すところが、如何にアベノミクスの結果と相違しているかを、以下に実証分析し新たな政策提言につなげたい。
振り返ってみると、2001年の財政投融資改革により、短期プライムレートが1.375%になりそれ以後、ITバブルで若干金利は上昇したものの、2016年のマイナス金利政策により金利は実質ゼロに近い水準で推移している。銀行の預貯金金利も普通預金0.005%~0.001%と長期にわたり限りなくゼロに近く、定期性預金の金利水準も0.01%~0.001%の間で推移している。
表1が示す如く、2013年~2020年の8年間をアベノミクスとすれば、銀行預貯金残高の平均残高は1283兆円となり預貯金の支払利息は9.9兆円(年間平均1.24兆円)となる。利回りは0.09%と極めて低く限りなくゼロの近い。このアベノミクスの間に預貯金の金利が1%であれば、1283兆円のうち約80%の家計の預貯金残高は約1000兆円となり、年間利息は10兆円となる。8年間で80兆円の得べかりし国民の利子所得は、実際に受け取った9.9兆円を差し引いても70兆円は消えた利子所得といえよう。
アベノミクスはその政策の「3本の矢」金融・財政・成長戦略のうち、大胆な金融緩和と機動的な財政出動政策で、わが国の経済活性化に成果を上げたかに見えたが、第3の矢の民間投資を喚起する成長戦略は上手くゆかず、国民に恩恵は及ばずいわゆるトリクルダウンの分配方式は成功しなかった。
図表1から読み取れるように国民の預貯金残高と利子所得はワニの口が開いた状態であるが、企業と政府の債務残高と支払利息はワニの口が閉じた状態にある。この状態は国民が低金利の犠牲となり、企業と政府が恩恵を受けたことを明確に示す図形であると言えよう。
次回はアベノミクスの期間の預貯金がどこに運用されていたかを検証したい。そして、第3回はアベノミクスが貧富の格差社会をもたらした原因を検証したい。最終回は上記の検証を踏まえて貯蓄から投資への資産所得倍増プランに資する提言を行いたい。
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【筆者略歴】京都市生まれ、京都大学経済学部卒。住友銀行取締役、三井住友カード副社長、SMBCコンサルティング会長、日本郵政執行役員、ゆうちょ銀行常務執行役、京都大学経済学部特任教授を経て、京都大学総長特命補佐。
構想日本理事(現任)、京都大学博士(経済)
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(編集後記)note記事での代表加藤の言葉「ザラザラ生活はクリエイティブ」。本当にそうだと思います。先日、久しぶりにプリンを焼きましたが、プリン一つであっても自分で作るとなると、あれこれ考えて工夫しますし見た目にこだわって容器を選ぶのも楽しい。日常生活の中で創造性を磨く場面がたくさんあって、その時間との向き合い方が「私そのもの」となってにじみ出るのだろうと、自分自身を省みる機会になりました。
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