先月からこのメルマガで「うんざり」企画を始めています。
いま世の中は「うんざり」の洪水といってもいいくらいです。そこで、読者から様々な「うんざり」を伺い、その背後にある問題や解決の糸口を考えようと思うのです。
私も日々「うんざり」に出くわしています。
例えば、どこかの市長がワクチンをさっさと打っていたという報道があります。言い訳会見を聞いていると、どうみてもこれは職権乱用だなあ。はい。ウンザリひとつ。
一方で、ワクチンの接種予約があっても、当日来ない人が必ず出てくる。そうするとワクチンは長時間保存できないから、当日中に使わないと捨てることになる。
そんなもったいないことを避けるために市長や消防職員など、手近なところで打てる人に接種しているケースもある。これも実は職権乱用、インサイダー情報などの問題があったかもしれないけれど、まあ、いいんじゃないかとも思います。
テレビで報道される市民の声も「おかしい」から「いいんじゃないの」まで、まちまちです。
「声」がまちまちなのは、背景にある事情が十分分からないからでもあるのでしょうが、一つには、普段の市長なり、市の職員なりの行いや、それに対する市民の信頼感による差だと思います。普段から、あの市長は「よくやっているな」だと、こういう時にも「いいんじゃないか」となる。
ワクチン接種のように、日々「想定外」のことが起こりうることについて、すべてルールを決めて対応するのは無理でしょう。(その意味で、「混乱」が起こるたびに正義面して「これが問題だ」とコメントしているテレビ報道にも、ウンザリふたつめ)
大事なことは、この例で言えば、市長たちが普段自分をどう律しているか、倫理観、モラルということでしょうか。
そういえば、愛知県知事のリコール問題は、モラルを問うリコールに、モラルのかけらもなかったわけですし、今や忘れ去られようとしている、モリ・カケ問題や河井元法相夫妻の参議院選挙買収事件の問題も政治のトップリーダーのモラルの問題に尽きます。(ウンザリたくさん)
うんざり洪水をつきつめていくと、日本社会のモラルの問題にいきつくのかもしれません。日本はそんなにモラルの低い国ではなかったと思うのですが、いつの間に、なぜこうなったのでしょうか。
毎週いただく様々な「うんざり」を元によく考えてみたいと思います。そして、政治、経済などそれぞれの分野で何がおこってきたかとモラル低下との関係について、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
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※本コラムは、2021年5月21日発行の構想日本メールマガジン【No.1010】に掲載した『代表コラム(17)「うんざりとモラル」』を抜粋し、掲載しています。