日本だけでなく世界各国で、議会制民主主義の機能不全が危惧されている。これまでは、国民のニーズに応えるのは専ら政治や行政が担うものと言われてきたが、社会や国民ニーズの多様化により、政治・行政だけでは受けきれなくなってきているのではないか。
そのような中で、新しい民主主義の方策を考える動きが出始めている。その一つが無作為抽出(くじ引き)だ。
<中略>
より多様な市民に参加してもらうための手法が無作為抽出だ。普段は仕事などがあり自分の住むまちのことを考えていないけれど、たまたま手紙が届いて仕事が休みだから参加しようくらいのスタンスの人の意見も同じ「民意」である。
<中略>
フランス政府が2018年に、気候変動対策として燃料税の増税を打ち出すと、国民が反発し、「黄色いベスト運動」(政府への抗議活動)が各地で行われたことを受け、政府は増税を撤回するに至った。そこで、マクロン大統領が主導し、無作為抽出の手法を活用して行ったのが「気候変動市民会議」(以下、市民会議)だ。国レベルで無作為抽出の手法が使われていることは日本との最も大きな違いといえる。
<中略>
歴史を紐解くと、直接民主制の発祥とされる古代アテネの時代(紀元前五世紀)にも、公職の抽選制が取られていた。行政の最高機関である「五百人評議員会」の議員や、司法の最高機関である裁判所の法定陪審員などは、くじで決めていた。
本文はこちらから