1.行革の要は「設置法」の改正である
98年6月、省庁再編などの中央省庁等改革基本法が公布された。基本法により、新しい省庁の縄張りが決まるが、それだけで行革の真の目的が達成できる訳ではない。「設置法」が各省庁の事務分担と権限を定めており、この内容を見直していくことが不可欠である。さもないと、省庁の再編は単に「ヨウカンの切り分け方を変える」ことに終わってしまう。
現在の見通しでは、99年4月からの通常国会に各省庁の新設置法案が提出される。全省庁の設置法が全面改正されるのは50年に一度のことであり、今回は「設置法」のあり方を根本から見直す絶好の好機である。
2.「設置法」の問題点
許認可や指導監督など官庁の権限は、個々の法律に基づいて行使されるのが法治国家の原則です。しかし、わが国の「設置法」は省庁の事務分担のほぼ同域にわたって「権限」を与えている。その結果、省庁に広範な裁量権限が生じている。
この裁量権限が、我が国再生の重要課題である規制緩和や地方分権の障害となるとともに、政官財の癒着構造や汚職の要因にもなっている。
設置法上の権限規定の見直しは衆議院での基本法案可決の附帯決議として採択され、99年1月に政府の中央省庁等改革推進本部が決定した「中央省庁等改革大綱」に権限規定削除が盛込まれた。今後の設置法案立案作業について引続き監視が必要である。
3.『構想日本』の提案
(1)各省庁の設置法から「権限」規定を削除し、「所掌事務」のみを定めることにより、省庁の行政権の行使を個別の法律に基づくものに限定する。
(2)新たに「行政権限法」を制定し、この中で各省庁の権限を、根拠を明示して、分類、列挙する。
4.「設置法」改正の効果
(1)省庁の権限、根拠が明確化される。
(2)行政指導のような根拠の曖昧な行政の介入が防止される。
(3)その結果、規制緩和の実効が上がる。
(4)根拠を欠く行政の介入に対し、行政訴訟が容易になる。
(5)官民の間の、責任の所在の曖昧な、もたれ合いの関係が変革を迫られる。