新年おめでとうございます。
昨年の年初のメルマガを見ると、私はこんなことを書いていました。「お正月にはお賽銭、お年玉などお金がつきものです。だからというわけでもないのですが、少しお金の話を。」昨年はこの後に金融政策の話が続くのですが、今年は政治とお金の話を。
何年か前、初めて大臣になった国会議員数人と食事をする機会があり、そのうち経費の使い方の話題になりました。一人は元々弁護士で、「弁護士事務所、国会議員、大臣、どの財布からお金を出すか結構悩むんですよね」と言う。ひとしきりそんな話をして、私はある種の初々しさを感じたものです。
これまで(弁護士事務所や議員など)自分あるいは自分に近い財布から出していたお金を、政府の機関という自分からより“遠く”にある財布から出すことにためらいが見られたからです。これが閣僚経験を重ねたり、長年政府の要職を務めていると、大臣などの財布をためらわず真っ先に使うようになるのでしょう。慣れていくほどに全部自分の財布だと思うようになる。あるいは他人の財布から先に使うようになるのではないかと思うのです。“構想日本用語”を使うと、より近くの財布=自分ごとだから無駄に使いたくない、減らしたくない。遠くの財布=他人ごとだからどんどん使っても気にならない、ということでしょう。
鈴木真砂女という俳人がいました。波瀾万丈の人生を送り、丹羽文雄などの小説に描かれた人ですが、彼女についてこんな話を聞いたことがあります。「私は仕事で行くときは普通車、遊びの時にはグリーン車に乗るの」と。少し前の世代の筋の通し方だなと思います。しがないサラリーマンは恥ずかしながら逆のことを考えますが、本来は他人の金ほど厳密に扱い、節約しないといけない。だから会社の経理には面倒くさいほどの手続きやルールがあるわけです。
翻って政治の世界を見ると全く反対です。個人や企業からの寄付金は非課税、政党助成金は税金です。他人の金というより「天下の金」です。それを、厳密どころか収支報告書に具体的な使途は書かず、大したチェックも行われない。さらにはウラ金に回して収支記録から外すことまでして「自分のもの」にしているわけです。あまりケチなことは言いたくないですが、ついでに言うと国会議員はほとんどが出張や選挙区と東京との行き帰りにはグリーン車を使っていると思います。これももちろん「特殊乗車券」(JRに乗車できる無料パス)として支給されている税金です。真砂女の爪の垢でも煎じて飲めと言いたくなります。
こういったことは政治資金にとどまりません。国の予算まで自分のカネ扱いして、政権維持、議席維持のためにバラまいているわけです。しかし「天下の金」は決して天からは降ってきません。国民が納めた税金か、税金に回るはずだったお金を使っているのです。しかも、長年使いに使ったお金は、今や1,000兆円を超える国の借金として残っています。そして、このツケはいずれ国民全員すなわち天下に降ってくるのです。
構想日本が実現したいのは天下のこと、みんなのことを他人ごとにせず、自分ごとにする世の中です。ところが日本の多くの政治家は国民のこと、みんなのことを二の次にして、政権や議席の維持など自分のことのために他人のカネをさんざん使っているのです。これを変えるには、やはり私たちみんなが政治のことを自分ごとにして、彼らを常に監視するしかありません。
2024年がみなさまにとって良い年になりますように、そして構想日本がささやかでもそのお役に立てるよう、スタッフ一同今年も一生懸命働きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
構想日本代表 加藤秀樹