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公会計制度


2000/05/19(金)
【記事】バランスシート、「制度」と「分析」

自治日報 平成12年(2000年)5月19日(金曜日)

 自治省財政局指導課が庶務を務める「地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会」は、この三月に自治体のパランスシートの在り方について報告をまとめた。バランスシートは、今日の地方行政におけるキーワードの一つになったと言って良い。ここでは、バランスシートの意義について検証したい。

 パランスシートは、既に幾つかの自治体による先行事例がある。また、企業局や水道局など地方公営企業法の財務規程の適用を受ける公営事業では、予算・決算において既に馴染みの制度となっている。しかし、「バランスシート」には、「制度」的導入と「分析」的導入があるのだ。

 地方公営企業のそれは法による制度的導入であるが、一般会計等を規律する地方自治法にはパランスシートによる予算・決算の定めはない。これを補足する目的で三重県などが取リ組んだのが、決算統計を活用した分析的なバランスシートである。決算統計を過去に遡って足し込んだ額を資産評価額とみなしているので個々の資産の評価額は不明であり、地方公営企業のそれより著しく精度が劣る。しかし、それでも自治体のストックの概要を推測する一定の情報価値はある。

 上記の報告は、この分析的パランスシートに一定の基準を示したもので、昭和六二年の地方自治協会の研究を引き継いでいる。報告には、先行事例に見直しを促す注目すぺき指摘がいくつかある。

 先行事例の多くは、道路等の社会資本を減価償却の対象から除外したり、不当に長い耐用年数を設定し、さらに、他団体への補助金までバランスシートに計上して資産評価額を膨張させていた。また、退職給与引当金を一〇〇%で計上せず、正味資産がバプルの状態となり現実の財政とかけ離れた結果になっていた。この点、報告では全ての社会資本(土地を除く)に減価償却を義務付け、道路の耐用年数を一五年とし、基礎数値を決算統計の「決算額」ではなく、そのうち「その団体で行うもの」に限定して足し込み、他団体への補助金等を除外し、さらに、退職給与引当金は一〇〇%計上するとした。他にも、附属書類において、個別に把握可能な主な施設の状況を明らかにする工夫を加えており、中身が不明であるという分析的パランスシートの短所を必死に補おうとする姿勢が伝わってくる。

 しかし、この手法は、「小規模な地方公共団体でも比較的容易に」(報告書)取り組める簡便法だ。研究会でも、先行自治体でも、はじめは地方公営企業のような台帳に根拠数値があり、個別資産の評価額がわかる台帳方式が検討されていたようである。しかし、市町村を中心に、公有財産や道路等の台帳の整備状況(特に会計管理の視点で)が不十分であリ、一朝一タには本来のバランスシートは作成し得ないことが分かったのである。報告は、分析的手法を採用したのであるが、台帳方式が本来の姿であるとの認識は明らかだ。改革指向のある自治体は、分析値を把握しつつ、台帳整備を進め、改をを進めるべきであろう。

 今後、自治体としては、少なくともこの分析的バランスシートに取り組む必要があるのだが、そこでの資産評価額は、あくまで分析値すなわち「推定値」であることをしっかりと認識し、その旨を明記して公表するべきであろう。そうでなけれぱ、地方公営企業などと同等のバランスシートが作成されたかのような誤解を生じさせてしまうからだ。

 一方、自治体の決算に制度的にパランスシートを導入すべきとする昭和三七年の地方財務会計制度調査会の答申を忘れてはならない。この答申や翌年の地方自治法の改正に対しては、さまさまな意見があるが、制度的パランスシートを議論した最初の取り組みであり重要な地位にある。分析的導入ではなく制度的導入となれば、冒頭の研究会の管轄には収まらないであろうし、少なくとも数次の地方自治法令の改正を要し、十年はかかるのではないだろうか。

 昨年、米国の州・地方政府では、二十年来の取り組みを経て、道路等の社会資本をパランスシートに計上するという大がかりな改革が決定した。日本でも、地方分権の時代に向けて、自治体財政権の強化が推進されることに対応し、それに相応しい財政管理の仕組みが必要となろう。

 そろそろパランスシートを制度的に導入するための研究を活発にするべき時期に来たといえるのでないか。その礎として、分析的パランスシートにおいても、自治体による主体的な取り組みが期待される。



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