• 構想日本の活動

公会計制度


2000/01/01(土)
研修会「バランスシートで行政が変わる」

<日付: 1999年05月26日>(2001年1月15日最終更新)


  ・日 時:1999年5月26日 午後1時30分~4時30分 
  ・場 所:銀座ソニービル8階 ソミド・ホール 
  ・講 師:廣田達人(公認会計士)・加藤秀樹(構想日本代表) 
  ・参加者数:120人 


主旨

 企業の不良債権処理が日本経済再生のカギになっているが、政府や地方自治体の「不良資産」も数多くある。企業が事業見直しの際、真っ先にみるのがバランスシート(貸借対照表)である。政府や地方自治体もバランスシートを作成し、資産や債務を正しく把握することにより「内からの行政改革」が可能となる。
 今回は、主として地方自治体の公務員を対象とした初回の研修会である。まず、公会計に複式会計を導入し、バランスシートを作成することの重要性を認識してもらい、バランスシートで何が明らかになるのか、基本的な理解を高めることを目的とする。 


内容 

1.バランスシートとは?
 現在の官庁会計は単式簿記による会計方式をとっている。歳入歳出は「資金繰り」という各会計年度のフローを示す情報にすぎない。官庁会計の決算で明らかにされているストック情報は、現金・基金や公債などの残高に限られており、複雑なストック情報の全体を明らかにすることはできない。財政状態を正しく把握するためには、複式会計を導入し、バランスシートを作成することが不可欠である。
 バランスシートは「資産」vs「負債」の一覧表である。資産は住民の「財産」であり、そこからは将来にわたって様々な行政サービスが生まれる。一方、負債は住民の「負担」であり、将来にわたってその償還に耐えなければならない。そして資産と負債の差額が「正味財産」である。 

2.企業会計の模倣ではダメ
 先行している幾つかの自治体等におけるバランスシートの中には若干の問題点もある。また、一部で行政のバランスシートの本質がないがしろにされ、「とにかく民間を模倣すれば行政がよくなる」といった風潮もみられる。行政にバランスシートを導入するする際、最初のボタンを掛け間違えてはならない。公会計基準が必要である。 

3.財政法上の問題
 財政法4条では、「非募債主義」と「建設公債主義」が定められ、同じ主旨が地方財政法5条にも明記されている。国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以てその財源としなければならないのが原則である。ただし、公共事業費、出資金、及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。 公債や借入金は長期的な資金繰りをつかさどるにすぎない。いずれ、租税や料金で償還することになるのであるから、行政における本当の収入は、租税と料金しかないと認識する必要がある。 

4.行政評価
 全国的な広がりをみせている行政評価のとりくみが成果を上げるには、バランスシートが不可欠である。行政サービスのコストとベネフィットの両方が明らかになって初めて、住民は判断できる。説明責任(アカウンタビリティー)の語源は会計(アカウンティング)と責任(リスポンシビリティー)にある。バランスシートは住民にとっては重要な情報源であり、行政にとっては説明責任果たすツールであり住民に伝える手段である。 

5.初資産、日本政府のバランスシート
 政府の公表数値に基づいて試算したもので、情報が開示されていない項目もあるので、あくまで「推定バランスシート」である。平成9年3月31日現在、日本国政府は約900兆円という巨額の債務超過となっている。 

6.諸外国の動向
 欧米先進国ではそのほとんどの行政機関において、バランスシートの導入は完了している。米国では第二次対戦後草々に公会計は複式会計に切り替わっており、公会計基準も確立されている。近年ではいままで困難と思われてきた国家レベルのバランスシートが試みられ、米国、ニュージーランドで公開されている。 


討議 

・「減価償却の問題はどうするのか?」
 「減価償却の年数は、建物は何年で道路は何年とか、かなり大雑把な年数を定めざるを得ない。税法上定められている年数の半分か3分の1くらいで丁度いいのではないか。企業会計でのやり方のように残存価額を10%残すのでなく、建設時に10%落とすという方法も考えられる。なぜなら、住民満足の立場からみると建設行為自体が住民満足につながっているからだ。自治体の財政課の方々がどういう負担意識をもっているかヒアリングしてきめる。制度を作るだけでなく、行政改革に活用されるようなバランスシートを作ることが大事だ。」 

・「公共事業費は全部バランスシートにのせるのか?」
 「公共事業費はすべからくバランスシートにのるというわけではない。補助金、メインテナンスは損益計算書の方へ行く。バランスシートですべてが解決するわけではない。バランスシートは行政コストを示すもの。年度帰属を配分しているだけ。そのコストに見合った住民満足が得られるかどうかは別問題。 政策施策事務事業(セグメント)ごとに細かくバランスシートを作って、コスト計算を発生主義の複式会計によるバランスシートで正確に行って、住民の皆さんにこの政策施策を続けるか判断してもらう。」 

・「引当金の問題はどうするのか?」
 「引当金の計算は技術的には簡単だ。制度として行うので、どれだけ精密にやるかによる。民間企業がたとえば100%の退職手当引当金を計上する。使う資料は行政にある資料と変わらない。退職手当の算定根拠の規定に従って、今年、支給された退職手当の計算明細があればできる。それと、職員当級別の、勤続年数別の累計表のようなものがあれば推定できる。」 

・「いくつかの自治体ですでにバランスシートを作ったということだが、議会や住民の反応はどうか?」
 「とりくみ自体を評価するのが第一だ。行政といえども民間とかけ離れたものでなく、同じスタンスに立って決定するのだという意識改革においてメリットがあったと思う。しかしバランスシートそのものの数字をみて、即、予算単年度主義改正ができたとか、税金をいくら下げるとか、具体的アクションをおこすところまでは行っていない。バランスシートは科学技術的なものなのでパッと見てもわからない。どのように見るのか広報活動が必要。 ある行政機関のバランスシートを作ったことがあるが、厳正に作ったので予想外の結果だった。作り方次第でこの辺で落ち着かせたいなという気持ちが先行して作られると”ことなかれバランスシート”になる。作る技術の問題もある。行政のバランスシートは言うならば脳外科手術のようなもの。専門外の医者では難しい。」 

・「事実があって会計があって判断がある。事実があって判断があって会計だと”ことなかれバランスシート”になってしまう。アカウンティング・リテラシーを高めて、そこからいろんなことを考えよう。100点満点の10点でも、まず、第一歩が大事だ。」



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