• ゲスト発言

第240回J.I.フォーラム 「北朝鮮問題から日本の安全保障、国際政治を考える」  2017/10/25(水)開催
ゲスト
石破 茂 (衆議院議員/元地方創生・国家戦略特別区域担当大臣)

伊藤 俊幸 (金沢工業大学虎ノ門大学院教授/元海将)  

コーディネーター 加藤 秀樹(構想日本代表)       

【議事概要】第240回「J.I.フォーラム」2017.10.25    於:日本財団ビル

 

 

「北朝鮮から日本の安全保障、国際政治を考える

―本当に考えないといけないことは何か―」

 

<ゲスト>

石破 茂 (衆議院議員)

伊藤 俊幸 (金沢工業大学虎ノ門大学院教授/元海将)

<コーディネーター>

加藤 秀樹 (構想日本 代表)

 

 

【議事概要】第240回「J.I.フォーラム」2017.10.25    於:日本財団ビル

 

 

「北朝鮮から日本の安全保障、国際政治を考える

―本当に考えないといけないことは何か―」

 

 


 

北朝鮮のミサイル、核がテレビなどで大きな話題になっていますが、大方がワイドショー的なノリです。この機会に日本の安全保障を具体的に考えてみよう、トランプ発言の背後にあるアメリカや中国の本当の意図、国際政治の実態を真剣に考えてみよう、といった姿勢は見られません。

 そこで、今回のフォーラムは、お二人のプロを迎えて、北朝鮮問題を入り口に、日本が直面している安全保障の現状や国際政治について深いレベルで議論していただきます。

 

 第240回J.I.フォーラム「北朝鮮問題から日本の安全保障、国際政治を考える―本当に考えないといけないことは何か―」では、石破茂衆議院議員、元海将の伊藤俊幸金沢工業大学虎ノ門大学院教授のお二人をゲストに迎えました。

 


加藤 240回目のJ.I.フォーラムを開催します。タイトルは『北朝鮮から日本の安全保障、国際政治を考える』ですが、私は―本当に考えないといけないことは何か―というサブタイトルが大事だと考えております。物事の本質はメディアや政治家の解説から聞き取ることが出来ないと思います。そのため今日は、北朝鮮を入り口として、安全保障の現場と政治のプロである伊藤さんと石破さんに、今本当に考えなければならないことについてお話しして頂きたいと思います。」

 

 

伊藤氏「今までのような単一的な思考ではいけない」


伊藤氏「2年前まで海上自衛隊呉地方総監で勤務していた。」

「今の北朝鮮情勢で皆さんが気にされていることは、北朝鮮とアメリカが戦争を起こすのかどうかだと思うが、私は今の状態では戦争は起こらないと思う。」

2013年の3回目の核実験により情勢が変わった。この時北朝鮮が1~1.5トンの核の小型化成功の可能性が高くなり、アメリカは核ミサイルが北から南に打ち込まれると認識した。」

「米韓同盟には既に第二次朝鮮戦争用の作戦計画があるが、今の状態では武力攻撃を行う正当性がない。その理由で一番大きいのは、安保理による『武力制裁決議』がないこと。要するに第一次世界大戦も第二次世界大戦も自衛権のもとに広がったので、国連憲章は自衛権による戦争を否定している。その結果作られた概念が集団安全保障措置による「武力制裁措置」なのである。また現在の状況では、米国が自衛権を発動する要件が全くない。更に、米国、特に共和党政権は国益に直結しない戦争は行わない。

他方、ロシアと中国の朝鮮半島における思惑はどちらも『現状維持』」

「日本が戦争できるように作った法律は2003年の事態対処法。一方、2016年の平和安全法制で可能になったことは『他国海軍艦艇の防護』や『グアムに届くミサイルの破壊』だけ。真っ黒が戦争で、真っ白が平和だとすると、その中間であるグレーの状況(不審船やミサイルの通過)にあって、日本はまだ平時であるが一緒にいる他国軍隊をどうやって守るのか、そこでどう対処するかを考えたのが平和安全法制だ。日本の防衛は、2003年をもって既に「専守防衛」から一歩踏み込んで、まだ敵が日本を直接攻撃していなくても、公海やその上空で敵を排除できるようになった。事態対処法は、切迫した危険を感じた段階で武力攻撃事態と認定できる。」

「今後の注目点は、次の3点。①今のように世界が一致して北朝鮮に経済制裁を中心とした圧力をかける方法で突き進むのか。②或いは北朝鮮の核保有を認めた上で、相互確証破壊により核使用できないように韓国に核シェアリングをするのか。その場合、日本にも核を置かなくても良いのかという議論となり、米軍が核を持ったまま日本に入国する、『持ち込ませず』の変更議論が起きるのか。③トランプは側近が中東の専門家、そして欧州にはイージス・アショアを置いていることから考えると、中東での政策の方がより重要と考えているのではないか。」

「トランプは一月に連発した大統領令・覚書の中に、イラクとシリアにおけるISの撲滅作戦がある。その結果、マティスによる作戦計画に基づいて作戦を進め、ついにISが撲滅するという状態に来ている。しかし、ミンダナオ島まで同じテロ集団が来ており、東京オリンピックが危ない。テロは日本も他人事ではない。」

「北朝鮮に気を取られているうちに中国は高性能のミサイルを持ち、ロシアはアメリカ海軍からオホーツク海を聖域化するため対艦ミサイルを択捉島に置き、日本の周りの情勢は変わってきている。」

「今や戦争は、陸海空プラス宇宙、サイバー、ミサイルという6つの領域をまたがる、いわゆるクロスドメインで行われるので、今までのような単一的な思考ではいけない。」

 

 

石破氏「政治とは何なのか、法律はどうなっているのかしっかり知っていないと判断を間違う」


石破氏「海将や将軍と呼ばれる人とお話をしていて、政治家は彼らの言葉をどう捉えているか。そこで是非読んでいただきたいのが、文春文庫の猪瀬直樹さんが書いた『昭和16年夏の敗戦』。昭和20年ではなく、昭和16年というのがミソ。昭和16年の日米開戦、当時の大日本帝國は、陸軍海軍、あらゆる官庁、日本銀行、同盟通信社などから30代の優秀な人物を集めてシンクタンクを作った。日米が総力戦で戦ったらどうなるか検証した。結論は勝てない。結果的にその通りになったが、広島、長崎の原爆は予想外だった。ソ連が中立を破って攻めてくる、というのも当たった。もう一つは、角川文庫から出ている『太平洋戦争 日本の敗因』。NHKの取材班が書いた本。あとは、ベストセラーになった福井さんの『亡国のイージス』。その本の帯に書いてあったのは、『よく見ろ日本人。これが戦争だ』。現代でも通じるのだ。海上自衛隊の行動というのは、海上警備行動、治安出動があって、防衛出動がある。防衛出動が自衛権の行使になり、海上警備行動と治安出動は護衛艦が出動しているのだが、あくまで警察権。警察権と自衛権とは何が違うのか。これは事の本質となる。憲法9条の3項に自衛隊を付け加えるというのはやらないよりはやったほうがよい。しかし、国の独立を守るのが軍隊で、国民の生命財産、公の秩序を守るのが警察なのだ、という基本中の基本をほとんどの人が理解していない。」

「国民主権は習うが、国家主権とは何か、というのは習わない。領土・国民・統治機構、この3つが国家主権の3要素であり、何があっても外国に触れさせてはいけない。」

「国家行政組織法上、自衛隊は完全に行政機関。警察と一緒。だとしたら、文民統制が浮上する余地は全くない。日本人はそれを考えていない。」

「マックスウェーバーによると国家とは、警察と軍隊という暴力装置を合法的に独占する主体。」

「日米同盟は請け負う義務の内容が異なる、世界で唯一の同盟。アメリカは日本を防衛する義務を負う。一方で日本はアメリカに基地を提供する。ド・ゴールは、同盟というのは共に戦うことがあっても、決して運命はともにしないものだと言った。だからアメリカが反対しても、フランスは核を持った。」

「国際連合とは、United Nations(連合国)であり、第二次世界大戦で勝った国の集まり。集団的自衛権は国連憲章に書いてあり、アメリカと一緒に戦争する悪魔のものではない。」

「私がこういう仕事をやっているのは、25年前に北朝鮮を見たから。日本海側で育ったので、海を越えると怖い国があると教わって育った。北朝鮮の徹底した統治を見てきた。政治は防衛とはいったい何なのか、法律はどうなっていて、何ができて、何ができないのか。海は、空は、陸は、法律的に、能力的に何が出来て何ができないのか。ちゃんと知らないと、判断を間違う。何と言われようと、それらを把握しないといけない。これからの中国や北朝鮮の問題に対する対処のために、しっかりとやらなければないない。」

 

 

加藤 「石破さんの話だが、他の国内の問題と共通していると感じるのは、リアリティの欠如。これは『昭和16年の敗戦』のときも同様だったと思われる。企業やメディア、国民のリアリティが欠如していた。その点で現代と当時は似ている。ここで、伊藤さんに危機管理について付け加えていただきたいのですが。」

 

伊藤氏「私は潜水艦に乗っていたが、現場を分かってくださるのが石破大臣だった。現場の世界を政治に伝えようと奮闘した時代があった。安倍政権の時、NSC(国家安全保障会議)が出来たことで総理に現場の声が通りやすくなり、現場のリアリティが総理のイメージに直結するようになった。」

 

加藤 「本当に現場のリアリティが伝わっているのか。昭和時代は軍がリアリティから離れてしまった過去がある。では、現在の自衛隊はどうなのか。お二人に率直なところを聞きたい。」

 

石破氏「現場を知る努力は必要。警察は政府に従属して、軍隊は国家に従属する、という言葉がある。民主主義国家においては、政治家が統制の主体となる。選挙で選ばれていないから、文官統制ではいけない。主権者に対して責任を負っている政治家のみが文民統制の主体となるため、大臣は知ろうとする努力をする必要がある。自衛隊は政治家に対して何が出来て何が出来ないかを知らせる義務がある。一方、政治家はオペレーションに口を出してはいけない。常にどんな時に戦争をするのか、諸外国は考えているが、日本は遅れている。」

 

伊藤氏「平和な時代に自衛隊がすべきことは抑止である。自衛隊はどうしたら勝てるか常に考えることでリアリティを保ち、演習で自信を高めている。吉田茂の反省は帝国陸海軍の対立で、それを克服するために陸海空統合の士官学校をつくった。これが防衛大学校だ。その結果、統合的な自衛隊が出来上がりつつある。しかしまだ、アメリカのような実戦経験はない。現実の戦争を体験している軍隊は、部下を無駄に死なせたくない。アメリカの軍人出身者は戦争したくないと考えている。」

 

 

 

質問 「陸海空の予算配分は適切か。陸上自衛隊に多すぎないか。」

 

伊藤氏「ミリタリーの本質は陸にある。相手国の領土に旗を立ててこそ勝利となる。陸というのはなくてはならない。現状では、一つのパイをとりあっているが、最近は島嶼防衛などで陸上自衛隊が参加するようになった。ヘリボーン作戦では陸上自衛官が海に飛び込み訓練している。統合が定着しつつある。パイそのものを大きくする議論もしたい。」

 

石破氏「海兵隊の任務は自国民保護と領土防衛。海兵隊は機能がコンパクト。海兵隊がないのはおかしい。運用体系が統合であるならば、装備体系も一緒でなければおかしい。過去防衛大臣の時に、陸海空、それぞれの要求を見て、重複やチグハグさが目立ったため、予算も総合的にと主張。その戦いは今も続く。」

 

加藤 「戦前からその問題はある。陸海の対立。予算本意で考えることこそがリアリティの欠如ではないか。」

 

質問 「アメリカが休戦協定を破って核を持ち込んでいるから北朝鮮も核を持つという議論もあるが、その観点での政策がないのはなぜか。また、その必要がなければ理由も知りたい。」

 

石破氏「北朝鮮はNPT体制(核拡散防止条約)に疑問を抱いている。なぜ核兵器を五大国しか持てないのか。NPTに未加盟ではあるが、インド・パキスタン・イスラエルはなぜ保有を認められているのか。北朝鮮は核武装によって世界での地位を得た中国のようになりたいと考えている。国の数だけ正義はあるから、北朝鮮の核保有を認めようという考え方もある。しかし、日本としては安全保障上認められない。」

 

質問 「中国は宇宙・サイバー技術やそれに対する予算などが日本を追い越そうとしているが、それに対する中長期的な対処はどうするのか。」

 

伊藤氏「日本の防衛省自衛隊の宇宙とサイバー技術はこれから。サイバーに関しては西側諸国と民間企業との協力を密にしている。宇宙に関しては、中国の動きに対して直接対応できない。宇宙に限らず他国に対する技術的優位を保つ努力が必要だが、防衛装備庁と大学の協力というレベルの話ですら反対されてしまう。日本はここをよく考えたほうが良い。」

 

加藤 「サイバーは中国に限らず、どこから攻撃されるかわからないが、それに関してはどう思いますか。」

 

石破氏「司法・立法・行政で軍に対するコントロールを行い、責任を取る体制を整えなければならない。中国のことが好きだ嫌いだという議論があるが、気概と中国の知識を持って、正面から向き合わなければならない。」

 

伊藤氏「西側諸国は現状維持だが、ロシア・中国・北朝鮮は力で現状変更をしてくる。それに対応するため、西側諸国で封じ込めようとしている。」

 

石破氏「中国は共産党一党独裁で、経済は資本主義だが、民主化をしようとしたら国家分裂になる可能性が高い。中国はかつての偉大な中国の復興を目指しているので、海洋進出などを今行っている。それは、かつての領土を取り戻すためだと本気で思っているからだ。日本は日米安保を強化し、日本としても何ができるか考えなくてはいけない。そうしないと日米同盟がもたない。」

 

加藤 「中国や西側諸国とどう向き合うか、日本としてどう軸を置くかお聞きしたい。さらに、アカデミズムと軍隊の関係について、シビリアンコントロールの問題ではないかお聞きしたい。」

 

伊藤氏「日本では軍隊イコール悪と考えられているが、日本以外の国では尊敬の対象だ。Jアラートの問題があったように、平和でありたければ戦争の準備をせよという意識を持たなければならない。そもそも保守とリベラルは、安全保障に関して対立する概念ではない。」

 

質問 「日米地位協定など、どのようにして国民に本当のことを知らせるのか。」

 

石破氏「対等な日米地位協定は憲法解釈の変更が必要で、日本もアメリカも守るようにしなければならない。」

 

伊藤氏「セルフディフェンスとコモンディフェンスがあって、欧州ではNATOが、アジア太平洋地域でもオーストラリアなどの軍は米軍と完全に一体となって活動している。それは属国のように見えるが、米軍以上の高度な情報共有システムは他に存在しないからだ。」

 

 

質問 「アメリカが北朝鮮に圧力をかけた場合に、在日米軍に攻撃を仕掛けてくることと、北朝鮮の核保有を認めた場合の日本の安全保障環境を天秤にかけた場合にどうなるのか。」

 

伊藤氏「北朝鮮が日本に攻撃することは国際戦争。国内戦争である韓国との紛争とは意味が違う。ここでは対話と圧力が大切。しかし、対話の互いの条件がかみ合わないので、終わらない。北朝鮮は核武装を完成させた後、アメリカと対話しようとしている。」

 

石破氏「北朝鮮は密告社会。共産主義なのに、世襲を行っているのは中国とは違う部分。日本はそこを考えなければならない。金正恩が権力を持ったままで核を廃棄させるのは難しい。金側の立場に立って考えることも必要。アメリカの出方にも注意が必要。かつての日本の占領のように北朝鮮の占領はうまくいかない。アメリカも勘違いをするのである。」

 

質問 「ミサイル防衛のリアリティについてお聞きしたい。Jアラートで完璧に守れるのか。リアリティをお聞きしたい。」

 

伊藤氏「防衛省は発射後直ぐにミサイル落下予測位置を把握できる。落下予想地点を把握した上でJアラートを鳴らす。Jアラートは大雑把な地域の分け方をしているため、直接関係のない県にまで発令されてしまっている。まだまだ改善点がある。」

 

石破氏「領域という言葉を間違って使っている。報道も。ミサイルが領空に入っていないのに、領空に入ったという情報が流れる。」

 

加藤 「最後にメッセージはありますか。」

 

伊藤氏「一般的に弾道ミサイルが飛んでくる高さを勘違いしている。宇宙空間、すなわち旅客機の20倍以上の高度を飛行してくるのであり、正しく恐れる必要がある。もし日本を標的とした弾道ミサイルだった場合、イージス艦はこれを宇宙空間でしっかり打ち落すことができることも知っていてもらいたい。」

 

加藤 「お二方にとっては基本的な話だったかもしれないが、われわれは普段接しない話であり、情報をもっと得ようとしなければいけない。その上で、現実的な話をしなければいけない。」

 

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