• ゲスト発言

第232回J.I.フォーラム  「ギャンブル」を考えてみよう  2017/01/23(月)開催
ゲスト
木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)

玄 秀盛(公益社団法人日本駆け込み寺 代表理事)

新里 宏二(弁護士)

【議事概要】第232回 「J.I.フォーラム」
「ギャンブルを考えてみよう」
日:2017年1月23日
於:アルカディア市ヶ谷 4F 鳳凰
<ゲスト>
木曽 崇(国際カジノ研究所所長)
玄 秀盛(公益社団法人日本駆け込み寺 代表理事)
新里 宏二(弁護士)
<コーディネーター>
加藤 秀樹(構想日本 代表)

<概要>
加藤:今日は232回目のJ.I.フォーラムです。先日の国会で統合型リゾート推進法が可決されました。法律の正式名称は長いのですが、内容としては全部で23条とそれほど多くなくカジノを作って、経済効果をもたらし、そこからの収入が国庫に入るようにして、依存や若者への悪影響という弊害への対策をしようという枠組みを定めています。この法案について国民の間で議論する時間もなくあっという間に法律が制定されてしまったと私は感じています。ですからこの機会に法律のメリットやデメリットを詳しい方に議論をしていただいて、皆さんでそれぞれ考えていただければと思います。
 今日は3人の方に来ていただきました。一人目は日本で数少ないカジノの専門家である木曽さん、弁護士の立場から法案に反対した新里さん、そして立場が少し違うのですが、実際にギャンブル依存症になっているような人と関わっている玄さんに来ていただきました。木曽さんからは弊害もきちんと対策をすれば、問題ないだろうという意見を頂けると思います。まずは3人にそれぞれの考えについて意見を述べていただければと思います。

木曽:昨年末のIR推進法の可決は、私たち推進派の立場からも青天の霹靂でした。2週間ほどの議論で決めてしまったことには正直に申し上げると批判的です。新たなギャンブルを導入することについてはある程度の反対があるのはむしろ健全なことで、それを無視することなく、丁寧に答えていくことが私たち推進派の立場だと考えています。今回のIR推進法はあくまで推進をするための法律であり、今後は政府側で1年をめどに実施法が制定されるのでその場では慎重審議が実現すればと考えています。今回、このような機会で、カジノについて、もっと広義に日本全般に定着しているギャンブルそのものについて議論する中でカジノが良いか悪いかを判断するのが正しい議論になのだと思います。
 政治的な話をすると今回のIR推進法案では付帯決議が16個あり、これが重要です。付帯決議は政府に義務付けはないのですが、国会のメッセージとして尊重する義務があるもので、今回その中にIRの導入の前提に地方議会の議決がなくてはならないということがあります。今回の法律では国がどこに建てるかを決めるのではなく、個別地域で発議をして国に申請をして、導入を決定することになっています。元々IR推進法に地域による発議に基づくものでなければならないという理念があり、今回付帯決議が盛り込まれたということは、地域の声をより重視すべきという指針であるということだと思います。国会での審議は終わりましたが、今後は各地で自分の地域にカジノを設けるか議論をするというプロセスになっていくと思いますし、そのことが重要だと思います。今年は東京都や横浜市などカジノの導入に前向きな地域で選挙がありますので、そこで民意が示されると思います。
 前提として今回のIR推進法の目的はあくまで観光地を作ることであり、全国にたくさん建てるというものではありません。今回の法案ではあくまでIRなので、カジノも含めた複合施設を全国に2~3軒建てることで観光を振興することを目的としたものです。そのため反対派からカジノ解禁法と呼ばれて批判はされますが、あくまでローカルの人をねらったものにすべきではないというのが推進派のそもそもの立場であり、観光客誘致の手段としてカジノが有効か否かを個別地域で議論されるべきと考えています。
 今後は政府提出という形で依存症対策法案が作られる予定で、国として早急にギャンブル依存症対策を定める予定です。これについても有効な手段になり得るのかを含めて議論をしなければいけないと思います。ギャンブル依存対策はカジノ以外にも既存のギャンブル対策も含まれています。残念ながら日本ではギャンブルを含めて依存症対策は立ち遅れていると思います。今回審議の過程でカジノ依存がクローズアップされ、対策が取られるのはいいことではないかと考えています。

加藤:少し追加で伺いたいのですが、カジノ施設関係者がカジノを設置する際の様々な規制について議論する場所として政府の中にカジノ管理委員会というものが審議会のような形で作られるということで大丈夫でしょうか。

木曽:まず推進本部という形で内閣府の中で準備会が作られ、そのあと正式な委員会が作られることになると思います。

加藤:その委員会の中で議論をして、さらに細かいルールの決定や、運営業者への認可を行い、大臣の諮問機関として機能して、大臣が最終的な決定を下すという形ですね

木曽:内閣府の中で作られるので総理大臣が委員会のメンバーを選び、総理大臣の名前で決済されると思います。

加藤:その委員会の中で、どこに建てるか、上納金の国と地域の取り分やギャンブルについて細かな決定がされるということでしょうか。

木曽:地方の取り分やギャンブル対策は地域の条例で決定することになると思います。

加藤:依存症対策については、カジノに限らずギャンブル全体に関して新たな帆率が作られるということで大丈夫でしょうか。

木曽:はい。次の通常国会でその様な形で提出されると思います。

新里:仙台で弁護士をしている新里と申します。1983年から弁護士を始め、消費者金融の問題に取り組んできた、借金で自殺をするような社会をなくしたいとの思いで弁護士活動をしてきました。多重債務者を弁護する中で多重債務者に対して何をやっているのだと叱ってきましたが、ギャンブル依存症という病気で叱って治るものではなく、法律できちんと規制をしなければならないと考えてきました。
 先日国会でIR推進法案について民進党側の参考人でお話しする機会がありました。今日はその際の資料を持ってきました。私は多重債務の問題を見ていく中で、人が借金を作って駄目になっていくという負けの総体がカジノの利益につながるわけで、負けが多ければ多いほどもうかるという人の不幸を前提としたビジネスを国の成長戦略の中心に位置づけることはよいのだろうか、そこまで日本の社会はギャンブルに頼らなければいけないほど他の成長戦略を描けないのかというのが出発点です。
 依存症の問題について申し上げますと、厚労省によればギャンブル依存症の推計値は536万人になっていまして、アルコール依存症の方は110万人弱ということを考えれば、その5倍にもなっており、日本は先進国と比較して4~5倍高い数値です。私は世界の6割のパチンコ機が日本にあり、日本各地にパチンコがあるという状態こそがこの状況を招いていると思います。カジノの売り上げで依存症対策をすればよいというマッチポンプ的な政策ではなく、きちんと別の財源を使ってやる必要があると思います。次の国会でギャンブル依存症対策が策定されると思いますが、その軸は2つあると思います。今議論されているのはギャンブル依存症になってしまった人を発見し治療し回復する措置ですが、それだけでは特効薬もない中で十分でないと思います。それだけではなく予防措置をしっかりと作っていかなくてはならないと思います。例えばシンガポールでは家族などから連絡が入れば入場規制を設けて依存症の対策を行っています。入場規制をしてまで対策を行うやる気があるかが問われているのだと思います。
 現在のギャンブルはパチンコを遊戯とした場合、基本的には公営ギャンブルであり、民間でギャンブルを運営することは認められていません。これまで賭博の売り上げは社会に還元されることが前提でしたが、カジノについては私企業が儲かることに繋がり、日本のこれまでの法制度から大きく変わってきます。そのことについて議論が足りないのではないかと考えています。

玄:私はギャンブル依存症の方とよくかかわるのですが、ギャンブルはあくまで博打であり、それで成功する人は全くいません。私自身も興味がありいろいろ調べたのですが、日本のギャンブルは現在30兆円も売り上げていて、全世界のカジノを束ねても日本のギャンブルの売り上げにはかなわないわけです。これにカジノが加わればさら負の側面が多くなっていくと思います。物事には光と影の側面があると思いますが、私は風下にいる人間として、ギャンブルから依存症や多重債務、暴力、家庭崩壊と繋がっていく姿を良く見てきました。日本全国にパチンコがあり、オンラインカジノなどもありますが、それらは暴力団の資金源となっています。カジノについては経済効果が語られますが、実際には負の側面が多いと思います。今回のカジノ法案には私は反対ですが、審議の過程でギャンブル依存症に光をあてられたのは、歓迎すべきことだと思います。日本では公営ギャンブル以外にもパチンコや、麻雀、野球賭博など表に出ない問題が数多くあります。それらの依存症についてはあまり議論がされてきませんでした。ギャンブルは生産性がないのにも関わらず、皆依存症という病気のため行ってしまうのです。カジノはパチンコ以上に金額の桁が大きいため問題も多くなります。またマネーロンダリングの問題もあります。日本の多くの方がカジノと言われてもピンとこないとは思いますが、ギャンブルについて考えるというのは議論の題材としてすごく大切であると思います。

加藤:今回のIR推進法では国や地域への上納金や雇用といった経済効果がある一方で、依存症や暴力団の問題があると思います。仕組みを作ることでマイナスの部分は排除できるのかということが賛成か反対かの分かれ目だと思います。経済効果を木曽さんに話していただいた後に、反論をいただき、その後依存症について話してもらった後、どのように対策をすればよいかを話して頂ければと思います。

木曽:この議論ではプラスの面もマイナスの面もあることが理解する事が重要であり、賛成派は良い点しか言わず、反対派は悪い点しか言わなければ、そのような議論をしても意味はないと思います。私は負の側面があることを否定しませんし、そのうえでメリットとデメリットを比較して皆で考えていく必要があるというのがカジノ研究者としての私の立場です。推進派としては3つのメリットがあります。1つ目はカジノが出来る前の投資誘因です。経済を振興する上で投資を増やしていくのは重要であり、統合型リゾートはそのような投資の呼び水になるというのは事実です。もし日本の大都市にカジノができれば1兆円を投資したいという海外の事業者も多くいて、それに伴い国内の事業者や投資家も投資を検討するようになっています。このような投資を地域に呼び込むのは重要なことだと思います。
 2つ目にカジノが出来た後に、観光収入を増やすことがあります。観光振興では、来てもらう事だけでなく、観光消費が重要です。観光振興では観光客が消費したいと思わせるようなメニューを準備することが大事で、カジノはその点で消費を押し上げる効果があると思います。ただし観光地が既に持っている観光資源といかにコラボレートしていくかという視点が重要であり、お互いが相乗効果を持つような地域では大きな効果を発揮すると考えています。
 3つ目は観光収入の増加に伴い様々な経済効果があるということです。例えば地域の雇用が増え、雇用された人がその地域で二次消費、三次消費をすることによって波及効果が生まれます。またカジノから得た上納金を財源として有効利用できるようになり地域の重要な政策に配分ができるようになるのではないかと思います。
 逆に問題点として、暴力団、依存症、青少年の悪影響があると思います。これらについては後程議論が出来ればと思います。

加藤:今の3つのメリットに対して、そのように上手くはいかないという意見もあると思います。今日は意図していなかったのですが賛成派が1人、反対派が2人ということで次に反対派の方から反論をお願いします。

新里:投資効果はすごいというのは間違いないと思います。カジノへの投資が集まるのは3年から5年で投資額が確実に回収できるのは間違いないからです。政治の世界ではカジノはIR全体の中で面積は3%だと言われますがシンガポールのIRでは、売り上げの8割を占めるなどカジノが大きく牽引しています。ですから投資をしたいということはもうかるからであり、海外の投資ということは海外にお金が流れていくことになると思います。ただしカジノの場合問題は誰のお金が収奪の対象になるのかということです。海外の観光客相手にやるのはおもてなしになるとは思えませんが、カジノの経済効果は、外国人がカジノをやるか、日本人がこれまで手を付けていなかった金融資産1600兆円に手を出すかのどちらかです。海外の投資が集まるのは、日本の特に、高齢者のタンス預金などがカジノに流れることを期待しているからであり、経済効果の反面失うことも多いと思います。
 観光消費の話についてですが、私は昔城崎温泉に行って感動したのですが、大きなホテルがないわけです。中に内湯はあるのですが、外湯に行くように促され、外で温泉に入ったり、食事をしたり、お酒を飲んだりできる訳です。皆で共存共栄しようということで地域全体が発展しているのです。そういう所にカジノができれば観光客を囲い込んでしまい、地域の発展に繋がらないのではないかと思います。またかつてのリゾート法のように、地域の魅力をうまく発信できず、全国に同じような施設が建ってしまうという失敗に終わるのではないかという懸念もあります。
 また地域への波及効果も、ただ雇用の横移動に繋がり、カジノを建てたところは良いけれど、全体としてそこまでの効果に繋がらないのではないかと思います。1億2000万の日本と500万人の都市国家であるシンガポールを比較して経済効果を語ることができるのかとも思います。

玄:私は現場で見るスタンスと、通ってしまったものは仕方がないという立場から意見を言いたいと思います。日本では博打は、広告戦略できれいに見えますが、実際にギャンブルの場に行ってみると作業着を着た人だらけで、きらびやかなカジノに行くことはないのではないかと思います。カジノは入場料やチップの値段が高く、富裕層を相手にしていることもあり、外国人を相手に商売をすればよいと思います。韓国では韓国人が入れるカジノが一か所ありますが、その周辺は質屋がたくさんあり貧民街になっていて、犯罪率も高いです。外国人の方向けに、日本の観光で楽しめる目玉の一つとしてカジノを作って、誘致をするのは構わないと思います。ただしカジノはファミリーでは楽しめません。遊園地なども箱モノで作っていくことで子どもも楽しめるようにすればいいと思います。民間の投資を促して、外国人向けに高い料金を設定してやる分には良いと思います。またマネーロンダリングの問題もきちんと対処していく必要があります。またこの法律の制定を機にギャンブル全体の議論をして、グレーになっている部分の白黒もはっきりさせたほうが絶対にいいと思います。博打を娯楽の感覚でやる分にはよいですが、依存症になり借金を抱えるという現実も見て、しっかり議論をしていく必要があると思います。

加藤:今玄さんから法律が通ったわけだし、ギャンブルについてしっかり壁を設ければという話がありましたが木曽さんも同じ意見だと思います。新里さんの話であった高齢者からお金を吸い上げることにつながるという点がありましたが、そこについてはどう考えますか。対策をすれば大丈夫である、あるいは心配もあるという点があればと思います。

木曽:そもそも高齢者のタンス預金に代表される国民の浮動資金など、世の中に回りにくい資金を還流させるというのは、宝くじの合法化で使われている言葉です。そこの言葉がクローズアップされてバッシングされるのは誤解があると思います。カジノの儲けは消費者の負けたお金という事実は否定しません。ただし国民が負けたお金を外資企業が吸い上げていくという表現にはもう少し落ち着いて考えて頂きたいです。カジノを作るためのリスク投資は海外の事業者がリターンを期待しているからこそ投資をするのであり、投資のリターンも考えれば、ただお金が国外に消えていくというのは乱暴な言い方だと思います。そして国内の企業もカジノの経営に参入することを考えれば、お金の流れは海外国内と様々なのでそこでのリターンを考える必要があると思います。
 カジノの専門家として明言しておきますが、カジノは必ずしも地域の活性化につながるとは限りません。導入の仕方を間違えれば地域の消費を吸い上げる存在になります。IRというのはカジノ以外にも宿泊や買い物など様々な観光機能を一つの敷地に内包しているものであり、お客さんは一度入るとそこから出ることは多くありません。地域にカジノが導入されるだけでは投資の効果はあるかもしれませんが、観光振興にはつながらず、地域は豊かになりません。だからこそ地域の中できちんと精査をして合意プロセスを経て、競争の中で少数を選定していく必要があると思います。また地域への経済還流という点に関しては、新里さんのおっしゃった城崎温泉のような仕組みは必要だと思います。温泉宿も敷地の中に温泉や食事の場所もあり、基本的には観光客がそこから出ないという施設なのですが、外湯に入ることのできる共通券などを配布して観光客が外に出るような工夫をしています。統合型リゾートに関しても同じような仕組みが絶対に必要で、そのような仕組みを地域が色々な創意工夫の中で考えていかなければ必ず失敗に終わると思います。

加藤:今手を挙げている自治体はどこですか。

木曽:今都道府県単位で予算を組んで調査や検討、住民を招いた公聴会などを行っているのは、北海道、千葉、東京、神奈川、和歌山、大阪、長崎の7都道府県であり、沖縄もかつては行っていましたが、現知事がカジノ反対派なので今は手を上げていません。市町村単位ではもう少しあります。

加藤:リゾート法や地方創生など国から予算を貰って地方自治体が施策を行った例では失敗が多いですが、自分たちで町全体に観光客を還流させるような工夫が出来る知恵と実行力を持つ自治体があると思いますか。

木曽:最低限そうしましょうということを普及させるのが推進派の役割だと思います。私は推進派の立場ですが、IRができれば地域は豊かになるわけではないということを強調しておきたいと思います。

加藤:今の木曽さんの話に対し、何かありますか

玄:IRというのはなぜカジノが中心なのですか?

木曽:それは先ほど新里さんのおっしゃったことが真実で、IRに設けられる機能は宿泊機能や国際会議場、劇場、博物館などたくさんあるのですが、カジノがIRの財政面を支えているのが事実だからです。

加藤:つまり本当のことを言えば、IRの中心は美術館でもよいけれど、現実問題としてリスクを考慮してもカジノによって儲けられる魅力は否定できないということですね。

木曽:そのリスクを良いとするかは地域の意見であり、国際会議場が必要だけれどカジノの利益を原資に立てるべきではないという結論であれば、地域の矜持として通していくのが筋だと思います。ただしこの国のギャンブルは、インフラを支えてきた部分も否定できないことなので、ギャンブルそのものを否定するのは乱暴ではないかと思います。そのうえで地域がどう判断するかが重要だと思います

加藤:物事は正負の両面あり、影の部分があるからとこわがっていればチャンスを失ってしまうかもしれない、影があるからやらないといった判断を地域それぞれがすべきということですね。

木曽:オリンピックの施設や強化のための資金はtotoくじからでてきている部分も多く、このような部分も含めて地域で判断するべきだと思います。

加藤:今の話というのはマイナス面ともかかわってきて、木曽さんはマイナス面については規制をしっかりと設ければなくせるのだという立場に対して、他のお二人はそれでは不十分だということだと思います。まず木曽さんのほうからこのようにすれば弊害をなくせるという具体例を言っていただければと思います。

木曽:シンガポールの事例ではIRを作って5~6年建てていますが、結果論から言いますとIRができてから依存症の可能性のある人の数は格段に下がってきました。先ほど新里さんが出した依存症患者は日本に536万人いるという統計については、あくまで推計値であり、ここから医師による診断が入って正式に依存症の認定がされます。この統計については正確を期すためにきちんと理解していただければと思います。いずれにしてもシンガポールではもともと日本と同程度の割合で依存症の可能性がある人がいたのですが、開業後は減っていきました。それはIRを導入するにあたって、依存症対策をしっかりやってきたことが要因だと思います。
 依存症リスクを減らすには、3つのことが重要です。一つ目は予防措置です。ギャンブル依存症がようやく病気として扱われるようになりましたが、そこに対する予防の概念は存在しませんでした。象徴的なのは教育段階では飲酒、たばこ、薬物の依存症リスクを教える一方、ギャンブル依存については一切教えていません。若者が依存症への意識も持たないままパチンコや公営ギャンブルに行けば被害が出ることが当たり前です。またギャンブル依存症は遺伝の要素が大きいということは臨床的にも明らかになっていて、リスクが高い人はお酒と同様に付き合い方を考える機会をもうける事が必要だと思います。
 二つ目は回復措置を強化することです。早期発見をして早期回復に向かうプログラムにどうのせていくかということです。そのプログラムに依存症の方をどう引き込むかが重要です。
 三つ目はこれが重要なのですが、ギャンブルの運営側がきちんと規制を行うことです。入場管理が特に大事で、依存症の方はギャンブルに来る頻度が上がるので、入場者の来店頻度を営業側がきちんと管理をして規制を掛ける仕組みが必要です。シンガポールでは本人もしくは家族などがギャンブル側に対して依存症リスクを伝えれば一切カジノは入れないという仕組みになっています。回復措置は別に取らなければいけませんが、対症療法としては効果があると思います。この仕組みは世界的に広まっていて、カジノにその仕組みの導入は決まっていますが、他のギャンブルでどう応用していくか議論をしていく必要があると思います。

加藤:前提として聞きたいのはシンガポールのカジノはシンガポール人でも入ることが出来ますか。

木曽:入場料が8000円かかりますが、排除プログラムに引っかからなければ、シンガポール人であっても自由に入ることが出来ます。

加藤:今の木曽さんの話を聞いて、例えば現場を見ている玄さんなどはどうお考えですか。

玄:日本とシンガポールでは風土が違うこともあり、うまくいかないと思います。日本では少額でギャンブルができるからこそ、毎日少しずつギャンブルをやり続ける習慣がつく事で、ギャンブル依存が深刻な問題になっていると思っています。木曽さんの話をうまく日本に合わせることが重要ですが、カジノ以前に日本では敷居の低いギャンブルが定着していて、そこに対策が必要です。

加藤:木曽さんの言うように新しいカジノには塀を高くすることで、入ってこられないようにするのはいいかもしれませんが、今の依存症対策については別に考えなければいけないということですね。

玄:お金がある人はカジノに行き、そうでない人は既存のギャンブルに行くという二極化になると思います。小銭で行けるというのが一番怖いです。

新里:依存症に関しては個人の問題でなく社会の問題としてとらえていくことが重要だと思います。今536万人と推計される依存症の方に対してどうするかという問題と、もしカジノが開業された場合にどのような規制をするかという問題があると思います。私は教育がとても重要であり日本では高校を出たあたりがギャンブル依存症になるうえで一番危険な状態であり、そこへの教育が大事だと思います。また依存症を生まないための予防措置が、既存の公営ギャンブルやパチンコの中にない中で、どのようにシンガポールのような仕組みを導入していくかが大切だと思います。
 私は昨年シンガポールでカジノを見て、地元の記者や依存症の方への支援者へのヒアリングもしてきました。シンガポールではカジノに入場するのに8000円かかるとのことでしたが、それは入場規制としてはほとんど意味を成しておらず、入った時点でマイナスなのでそれをとりかえそうとして依存症になってしまうわけです。また本人や家族からの要請によって入店規制をしても、依存症になった後で手遅れの状態です。そのため2015年から規制をさらに強化し、月6回以上カジノへ行く人についてはカウンセリングを推奨し、預貯金の額を申告するように指示し、その指示を聞かない人にはチームを作って生活の実態を把握できるようにしたところで効果が出たのだと思います。日本では入場規制のような仕組みをどう徹底できるようにするかが課題になると思います。シンガポールについてはカジノを国民があまり利用しやすいように、広告を禁止したり、シャトルバスを禁止したりしています。
 日本のカジノは中国のVIPがメインではなく、あくまで日本人を対象としていることから投資が集まっているのであり、横浜や大阪の試算ではカジノの利用者が日本人を中心にターゲットとしています。カジノの規制に関してはどのような人をお客さんとしてターゲットにするかで話は大きく変わってくるのだと思います。

加藤:今の誰をターゲットにしているのかという話を本音ベースで聞きたいです。またカンウォンランドの実態や、韓国の他のカジノがどうかも話を聞きたいです。

木曽:入場料を高くすることについてはカジノの専門家から言えば、マイナスの効果しかありません。ディズニーランドを見ていただければわかる通り、高い入場料のもとをとるために一日中います。もしカジノでも高い入場料を取れば長くいるインセンティブが生じてしまいます。また社会一般的に言えばギャンブルはあくまで自分で予算をあらかじめ決めて、予算が無くなればすぐ退場するのがルールであり、理想的なギャンブルの姿です。入場料がそのようなルールに関して間違った判断を導くという意味では、リスクが高すぎる施策であり、シンガポール以外の専門家は入場料についてはまずい施策であると主張しています。そして、入場の回数規制も重要です。本来はIRを作るのは観光振興のためであり、地域の人が日常的に利用するためのものとしてとらえてはならないのです。政策的には日常的な利用を求めておらず、1カ月のうちに限定した数しか入れないというのは観光客にとっては問題ないうえに、ローカルで入って依存してしまう人を防ぐのに適切な方法だと思います。
例えば韓国のカジノは1カ月で15日以上行く人はフラグが経ち、2カ月続いた場合にはカウンセリングに行かなければならないというルールになっています。これは入場回数をカウントする仕組みをきちんと設けているから出来るのです。
韓国の場合は総入れ替え性になっており、一日中入り浸ることは出来ず、そのうえで一定の回数を超えると、カウンセリングを受けなければいけないシステムになっています。韓国のカンウォンランドは先ほど申し上げた地域にカジノをただ入れてもうまくいかないといういい事例です。カンウォンランドはもともと観光地でもないところにIRを建てたため、地域に観光地が一切ないためIRから観光客が出ることは無く、雇用は生んだものの、地域でお金が使われず、質屋さんや消費者金融が目立ち景観も悪化し、地域の社会的評価がマイナスになるという事態になりました。統合型リゾートはただ入れるだけではいけないと繰り返し述べていきたいと思います。

加藤:最後にマネーロンダリングの問題も含め、カジノに暴力団との関係についてお聞きしたいと思います。実態はどうなのでしょうか。

玄:実際に競馬、競艇、競輪などは全てノミ行為があり、暴力団の資金源になっています。高校野球では野球賭博が行われます。暴力団の経済規模は3~10兆と言われていますが、表には見えない資金源となっているのが実態です。日本には諸外国にない暴力団の対策をしなければマネーロンダリングに繋がってしまうと思います。

木曽:産業の中に暴力団が入ってくるのを排除するのはライセンス制度をどうやるかということです。現在の風営法の中でも、店舗の設置認可を出す基準として店舗管理者のバックグラウンドを警察がきちんとチェックするという仕組みは行っています。カジノについては個人が労働者免許を取ることを義務付けようということになっています。アメリカではカジノで働く人はFBIから金融履歴や指紋などの身分調査を受けて、反社会的な組織との関わりがないかを調べられます。
 難しいのはマネーロンダリングの問題であり、カジノは金融業や宝石や不動産と並んで、ロンダリングをされやすい産業であり、金融機関のような厳しい対策をカジノでも行っていく必要があります。使用金額の管理を行い、一定量を超えれば身分証の提示を求め、疑わしい取引があった場合警察に報告する義務を設けるという仕組みが必要だと思います。
 また暴力団がお客さんとして入ってくるのはとても難しく、対策は取りようがありません。宣誓書を書いていても、気にせず入ってきます。日本のカジノでも会員制や入場回数規制で一定のガードはできますが、それを乗り越えてくる暴力団の人や、その関係者に対してどう対処するかは、色々な業態の人が悩んでいるところです。

新里:暴力団が跋扈するという不安感がカジノ法案に対する反対を示しているのだと思います。私は多重債務やカジノについて様々な事例を見てきましたが、やはりカジノができれば闇金が跋扈してしまいます。それを排除できず、おまけに経営しているのは暴力団関係者というところは危惧しています。ギャンブルの問題は日本人の法意識全般が問われているのだと思います。

加藤:質問がある方は挙手をお願いします。

質問者①:東京の大田区で議員をしている岡と申します。入店規制が大切だということは理解しました。カジノからいくら地方の財源にしていいのかはぜひ聞きたいです。

木曽:現行のIR推進法の中では、IRの売り上げから地方自治体の財源を獲得してよい形になっています。また上限は特になく、条例によっては2割3割もできます。ただし高くなればなるほど投資誘因が低くなってしまうので、そこのせめぎあいが重要だと思います。

加藤:今の財源の話は法人税以外にも、上納金を取ることが出来るという話ですね。では次に二人の方の質問を一気に受け付けたいと思います。

質問者②:キオシと申します。いろいろギャンブルをしてきたのですが、カジノは控除率が低く、またルールが明確で一番フェアであると思います。

木曽:カジノが他のギャンブルと比較して控除率が一番低いのは事実だと思います。ルールが明確であるという点については、賭博はルールが明確なのが最低条件だと思います。

質問者③:横浜から来た、コンサルタントをやっている青木と申します。カジノの問題で売買春の問題も切り離せないと思います。そこについてはどう考えるべきでしょうか。

玄:カジノがあるような地域にはどこでもついて回る問題ですね。

木曽:事の善悪を抜きに聞いてもらいたいのですが、売買春は日本で違法なのでカジノでも当然禁止すべきです。モラル面とは別に、カジノに必要であれば、風営法の範疇であれば性風俗があってはいいと思います。

加藤:日本はモラル的にあってはならないことはないことにしてしまう国です。ですから日本には売春がないことになっており、パチンコは景品を獲得する遊戯となっています。すぐ裏に行けば交換ができるのにも関わらず、見て見ぬふりとなっており、それを規制する警察が多くの利権を握っているという仕組みになっています。ですから玄さんの言うようにギャンブルを全て表に出して考えることはできないでしょうか。

新里:法案の審議は拙速でしたし、1年以内に実施法を作るというのも早すぎると思います。ただし今まで議論がされてこなかったカジノを含めたギャンブル依存の問題、暴力団の問題を議論しなければならないと確認が出来たのは大きい事だと思います。
玄:性善説ではなく性悪説に立って考える必要があり、女性が入れば風俗の問題が当然出てくると思います。そのような点について国民が関心を持ち続ける事が重要だと思います。

質問者④:NTTで務めております水元と申します。データも示せばいいと思います。パチンコは安いが故に依存症になってしまうリスクが高いことを考えると、ギャンブル別の危なさについてぜひ聞きたいと思います。

木曽:個別論が必要であり、カジノがどうあるかを前提にほかのギャンブルはどうすべきかというのは議論が違うと思います。

玄:パチンコは敷居が低く、どこにでもあるせいで、博打をやっているという抵抗感がなく、みんなが行きやすくなってしまっているという所に問題の根深さがあると思います。

加藤:時間がなくなってきたので最後に一言ずつ何か言いたいことがあればお願いします。

新里:私は仙台で弁護士をやっているのですが、昨日の朝日新聞で東日本大震災の被災地でパチンコ屋が高齢の被災者のサロンになっているという記事があり、私自身被災者への支援をしてきた立場からこれでよいのかと思う一方で、ギャンブル依存症の問題を考えるうえで、公営ギャンブルやパチンコ業態をどう規制していくかということについて考えなければならないという風に思います。

玄:日本人がギャンブルそのものを考えていく機会が少ないので、ギャンブルが危ないものだという視点を持って考えて欲しいと思います。

木曽:こういう審議を国会や地域で1年続けることが大事だと思います。今日議論した2人の方も反対派という立場でありながら、建設的に議論をしていただき大変良かったです。推進派としても建設的に議論をしていく必要があると感じました。

加藤:日本はあるテーマについて賛成反対がでるとすぐイデオロギーの話になり、噛み合った議論が行われません。ギャンブルという行為についても、人がのめりこんでしまうからこそ、大昔から禁止されてきたのだと思います。さらに日本ではないことにしてしまうという状況なので不健全だと思います。今後はギャンブルについてオープンに噛み合う議論をしていかなければいけないと思います。皆さん是非頭の中で色々考えて頂きたいと思います。次回は島の暮らしから考えるということをテーマに淡路、奥尻、佐渡の市長さんに話をしていただきます。自治体の行政や議会でよい議論ができることは少ないですから住民も巻き込んで、地域活性化にカジノがどうつながるかということを軸に議論をしてくれればと思いました。

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