構想日本

【自治体決算カードの見方】その10:投資的経費

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これまで9回にわたって決算カードの見方と問題点等を説明してきましたが、シリーズの最後に投資的経費について説明します。

道路等の都市インフラや公民館、福祉施設のような公共施設は、諸課題解決のために必要な施策を具現化する役割と住民活動の拠点、経済活動の基盤として整備されてきました。特に、高度経済成長期の人口急増に伴い、時代の要請や住民の要望に応えて多くの公共施設の整備を進めてきましたが、1990年代の後半から厳しい財政状況が続く中で、比較的裁量幅が大きい投資的経費への配分を調整することで、地方自治体は財政収支の均衡を図ってきています。

以下のグラフは5月16日の経済財政諮問会議に総務大臣が提出した資料ですが、地方財政計画の歳出規模が減少する中で、一般行政経費は増嵩し、これを補うために、給与関係経費や投資的経費を調整して収支の均衡を図っています。給与関係経費の減少は、各自治体が職員定数の見直しなどにより削減に努めていることは前回説明しましたが、投資的経費の減少は、国の補助事業の削減に加え、地方単独事業の削減も含まれており、住民生活に未着した事業への影響も生じているかもしれません。

 

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このように投資的経費が減少しているのは、道路や橋りょう、下水道などの都市基盤が進んでいること、公民館や文化会館、スポーツ施設などの公共施設が数多く整備され充足しているという現象もありますが、必要な手当が行われなければ都市の劣化が進み、住民生活はもとより経済活動にも支障が生じ、都市経営に重大が影響を及ぼします。

高度成長期に整備した公共施設等は、老朽化をはじめ、耐震化、省エネ化、バリアフリー化などへの対応が急務となっています。また、人口の減少と少子高齢化、過疎・過密化など人口構造や人口動態の変化に伴う公共施設の再配置、市町村合併に伴う公共施設の再編が必要となっています。しかも、財政状況は逼迫しており、「今あるから」という理由だけでそのまま継続することは将来の世代に大きな負債を引き継ぐことになります。

そこで、公共施設の最適化のための検証作業が重要な課題となっています。「最適化」とは、公共施設の配置を見直すだけでなく、効率的かつ効果的に使用されているのか、管理運営のための体制や仕組みがしっかりできているかなど、総合的な観点から検証することを意味しています。

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